獣医師のドッグフード研究コラム

第2回:犬の痒みの訴え

 

こんにちは。獣医師の清水いと世です。今回は犬の痒みの訴えについてお話させていただきます。

 

 

痒みとは

掻きたい気持ちになる皮膚や鼻粘膜などの感覚です。

 

 

痒みの症状

「掻く」です。
虫や異物の付着による違和感から行うこともあれば、皮膚炎により生じることもあります。

 

掻き方は、基本的には人間と同じで、痒い所を掻きます。多くは後ろ足を使って掻きますが、人と同じように前足を使って掻くこともあり、口(歯)で噛むことによって掻くこともあります。

 

 

そして、足や口を使う以外に、「こすりつけ」で掻くことがあります。壁や床(地面)に痒い箇所をこすりつけます。この症状で独特な体勢が、お座りの状態でお尻を床にこすりつけながら歩く、わんちゃんです。

 

これは、肛門嚢という肛門近くにある非常に臭い分泌物を出す器官(袋状)に、分泌物が溜まりすぎたことで生じると言われています。

分泌物を出したいのか、それとも溜まった袋を糞便と勘違いしているのでしょうか。
肛門よりも、床が気になりますね。

 

この症状は、肛門嚢の分泌物を出すと、改善が認められることがあります。通常、動物病院やトリミングサロンで絞り出す処置をしてもらえます。

肛門嚢に炎症があると、炎症性の痒みや分泌物が排出しにくくなっていることがあります。そのためにこすりつけている場合もあり、炎症がひどいと肛門嚢が破れてしまうこともあります。

 

こすりつけがひどい場合や肛門嚢の分泌物を出しても改善が認められない場合は、肛門嚢以外の異常もチェックが必要です。動物病院の診察を受けましょう。

 

そして、もうひとつの症状は、「振る」です。
特に、耳の中の違和感では、頭を振ります。外耳炎や耳の中の異物感では、後ろ足で掻くだけでなく、頭を振るしぐさを見せることもあります。

 

では、鼻の中の痒みや違和感は?
人のように鼻の穴を指で掻くことはできないため、鼻をこすりつけます。また、鼻から空気を早く送り出したり(くしゃみ)、逆に速く空気を吸い込んだり(逆くしゃみ)する症状は、鼻の中の違和感により生じると考えられます。

 

逆くしゃみは、初めて目の当たりにすると、発作や呼吸困難にも見えますが、逆くしゃみが止めば、いつもの通りに戻ります。
逆くしゃみを人の症状に例えるなら、鼻の中に、ご飯粒が入り込んでしまって、それを口の中に再び戻すために、一生懸命鼻から吸い込む動作と似ています

 

痒みの症状は、一時的であれば心配いりません。痒みのあたりに問題(炎症などの異常)が生じているなら、治療が必要になります。

 

 

痒みの原因

継続する痒みは、通常、そこに何らかの炎症(皮膚炎、外耳炎など)があることがほとんどです。
単純な虫刺されから、アレルギー(ノミアレルギー、食物アレルギー、接触アレルギーなど)、感染症(細菌や寄生虫など)や外傷などの原因があります。

 

炎症がなくても、皮膚が過敏になっているような状態(乾燥肌など)でも痒みが生じやすくなりますし、皮膚以外の原因(関節の痛み、便秘、ストレス、脳の異常など)でも掻いたり舐めたりこすりつけたりすることがあります。

 

不安な症状は、動物病院に相談しましょう。

 

 

痒みの対処

一時的な痒みは、処置の必要はありません。私たち人間も、たまにはどこかを掻きます。虫にも刺されますし、イライラして頭を掻きむしります。犬も同様です。

 

ひどい痒みは、掻き過ぎて皮膚がただれるため、掻く行動自体がさらに皮膚を傷めます。

 

皮膚の異常は、正常な皮膚と比べるとわかりやすいです。
被毛の流れに逆らって指でスーッと1本線を書いて被毛をかき分け、異常のない皮膚と比較しながら、チェックしてみましょう。

 

ノミ(ノミ糞)の存在、皮膚の赤み、ひどい匂い、べとつき、ふけ、触ると嫌がるなどの症状があれば、治療が必要です。

 

わんちゃんの痒みの訴え(症状)や皮膚の異常に気づいて対処できるのは、飼い主様だけです。

 

動物病院では痒みの原因を探して投薬などの治療を行いますが、薬が飲めないなど、わんちゃんや飼い主様の事情があれば、きちんと伝えましょう。

 

同じ病気でも、治療は一つではありません。
例えば、細菌性皮膚炎(膿皮症)は、細菌感染によって皮膚に膿が溜まる病気です。細菌を殺す抗生物質を使って治療を行いますが、皮膚の消毒やシャンプー、食事や環境の変更で改善を試みることもできます。動物病院でご相談ください。

 

 

 

シャンプーをした後にタオルドライをしてもらうヨークシャテリア

お家でのケア方法

皮膚がデリケートなわんちゃんは、皮膚炎が改善しても再発することがあり、日ごろのケアはかかせません。

 

皮膚炎により抜け毛が、そして掻くことにより毛玉が多くなるため、ブラッシングを行いましょう。
被毛が密集して絡まって空気の通りが悪いと、皮膚炎の治りは悪くなります。

 

ハサミによる毛玉の除去は、皮膚を切ってしまうことがあるため危険です。犬の皮膚は人の皮膚より伸びやすいので、引っ張って毛玉を切ると、皮膚を一緒に切ってしまうことがあります。
ひどい毛玉は、動物病院やトリミングサロンに相談しましょう。

 

皮膚炎によるべとつきは、細菌などが増えやすい環境になります。シャンプーするのも方法ですが、皮膚の状態によっては、シャンプーで悪化することもあるので、動物病院で相談しながら行いましょう。

 

通常、炎症の起こっている皮膚は、熱感を持ち、それ自身が痒みを悪化させます。
冷たい濡れタオルで炎症のひどい皮膚を冷やしたり、シャンプー後のドライヤーを冷風で仕上げるのも方法です。

 

炎症のある皮膚は、とてもデリケートになっていますので、ゴシゴシとこすったり、熱いタオルを当ててはいけません。

 

みなさまのわんちゃんへの愛が熱くなり過ぎないよう、ご注意ください。

 

 

 

 

 

犬の写真

獣医師清水 いと世 (京都大学博士 / 農学)

山口大学農学部医学科卒業後、動物病院にて勤務。
10年ほど獣医師として勤務した後、動物専門学校で非常勤講師を務める。
その後、以前より関心のあった栄養学を深めるために、武庫川女子大学で管理栄養士の授業を聴講後、犬猫の食事設計についてさらなる研究のため、京都大学大学院・動物栄養科学研究室を修了。
現在は、栄養管理のみの動物病院「Rペット栄養クリニック」を開業し、獣医師として犬猫の食事にかかわって仕事をしたいという思いを持ち続け、業務に当たる。

 

 

 

 

 

 

 

 

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