獣医師のドッグフード研究コラム

第50回:犬の血液検査項目 -BUN(血中尿素窒素)-

 

こんにちは。獣医師の清水いと世です。
今回は、わんちゃんの血液検査の項目、BUNについての説明です。

 

 

■はじめに(この血液検査項目のコラムをはじめてご覧になる方はお読みください)

ここで取り上げている血液検査のひとつの項目のみで、わんちゃんの健康や病気の状態は判断できません。

動物病院では、他の血液検査の項目、触診や聴診のような身体検査、そしてレントゲンやエコー検査などを組み合わせて診断を行います。
ここの内容は、動物病院で受けた検査項目の確認や、かかりつけの獣医師から受けた説明の復習にご利用ください。

 

心配な血液検査結果は、わんちゃんのためにも、必ずかかりつけの動物病院に相談しましょう。
ネットで情報をピックアップして不安を増やしてしまうより、かかりつけの獣医師に直接ご確認いただいた方が、早めの解決につながります。

 

 

BUNとは

BUNとは、血中尿素窒素(BUN:blood urea nitrogen)のことです。BがBlood(血液)、UがUrea(尿素)、NがNitrogen(窒素)で、血液中の尿素に含まれる窒素の量を表しています。血液中に尿素が多ければBUNは増加し、少なければBUNは減少します。

 

 

尿素はアンモニアから肝臓で合成される

尿素はアンモニアから合成されます。

ドッグフードの材料でもある肉や魚にはタンパク質が多く含まれています。また、犬や人間など動物の体内には筋肉のようなタンパク質が存在します。

これらタンパク質は分解されるとアミノ酸になります。アミノ酸はタンパク質の合成などに使われますが、余った分は分解されます。また、タンパク質をエネルギー源として使用する際もアミノ酸は分解されます。

 

アミノ酸には窒素が含まれていて、分解されるとこの窒素はアンモニアになります。

アンモニアは体にとって有毒であり、過剰に蓄積するとてんかん発作のような症状が起こります。このためアンモニアは、肝臓の尿素回路(肝臓の細胞で行われる尿素を合成する化学反応の回路)で尿素に作り替えられた後、血液に乗って腎臓に運ばれ、尿中に排泄されます。この血液の中の尿素を血液検査では測定しています(血中尿素窒素)。

 

タンパク質(アミノ酸)の分解が多ければアンモニアが増加し、アンモニアから合成される尿素の量が増え、BUNは増加します。

 

 

BUNの異常は尿素の産生や排泄の異常(BUNが高くても腎臓の異常とは限らない)

BUNの増加は、血中の尿素の増加です。作られる尿素が多かったり排泄される尿素が少なかったりすると血中の尿素は増加します。

摂取するタンパク質量が多すぎたり、体内の組織破壊が多ければ、タンパク質(アミノ酸)の分解により尿素の素であるアンモニアが増加し、尿素も増加します。

 

腎臓が悪くなって尿素をうまく排泄できなくなると血中の尿素は増加します。また、腎臓は血液から尿素をろ過して排泄するため、心臓が悪くなって腎臓への血液の流れが滞るような場合も尿素の排泄が減少し、BUNは増加します。

 

一方、BUNの減少は、血中尿素の減少です。作られる尿素が少なかったり排泄される尿素が多かったりすると血中の尿素は減ります。

 

食欲不振で食べるドッグフードの量が少なくなり(栄養不良)、尿素の材料であるタンパク質の摂取が減ってしまうと、作られる尿素が減少し血中の尿素は下がります。

 

肝臓の病気で合成される尿素が減る場合もBUNは下がります。また、尿の量が増えるような病気で尿素の排泄が増えBUNが減少する場合もあります。

 

 

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腎臓病の評価のためには他の検査も必要

 

BUNはよく腎臓病の指標として検査されますが、上記したように、BUNはタンパク質の摂取量、心臓や肝臓など腎臓以外の病気でも増えたり減ったりする場合があります。

 

腎臓病を確認する血液検査にはクレアチニン(Cre)もあります。クレアチニンは筋肉量の影響を受けますが、BUNほど他からの影響を受けないため、腎臓の評価のためにBUNとCreの両方を確認する場合がよくあります。

 

これらは腎機能がかなり落ちないと増加してこないため、より早期に診断できる項目(SDMAなど)を検査する場合もあります。

 

腎臓病の診断には、血液検査だけでなく、尿検査、レントゲンやエコー検査なども行われます。

 

 

BUNが異常の場合は原因究明と治療効果の確認のために検査を実施

BUNの異常は、通常、腎臓の異常を疑いますが、肝臓や心臓の病気、食事の影響がないのか、動物病院では他の検査を実施して、BUNが異常となった原因を探します。

 

BUNの異常が腎臓病によって生じた場合でもそれ以外の病気によって生じた場合でも、その病気に対して処方した薬や療法食の効果、病気の進行の有無を確認する際にも、定期的に診察や検査を行います。

 

 

BUNが異常となった原因によって治療や栄養管理は異なる

上記したように、BUNの項目のみで腎臓病は判断できません。BUNが上がっているから腎臓が悪いと考え、腎臓用の療法食を獣医師の指示なく与えてはいけません。

 

腎臓病用の療法食は通常、低タンパク質低リン食です。BUNの増加が組織損傷などによって体内のタンパク質の分解が増えていることが原因であれば、その壊れた組織を治すためにタンパク質の摂取は重要です。また、腎臓からリンの排泄異常が認められる前に低リン食を与えてリンが不足するようなことになってもいけません。

 

療法食は病気の犬猫のための食事であり、健康な犬猫が健康を維持するために食べる食事としては不適切な場合もあります。また、療法食を食べていれば病気にならない、悪化しないわけでもありません。動物病院で定期的に診察を受け、療法食の継続、中止、変更の指示を仰ぎましょう。

 

 

まとめ

BUNは血液中の尿素を表しています。

 

血液検査では、主に腎臓病の確認に用いますが、かなり腎機能が落ちないとBUNの値は上がってきません。また、腎臓の異常以外の原因でその値は増減します。

 

BUNの数値のみではなく、他の血液検査の項目、レントゲンやエコー検査によって、獣医師は腎臓病を診断します。BUNの異常の原因に基づき処方された内服や療法食は、BUNが基準値に戻っても、その継続の必要性は獣医師の指示に従いましょう。

 

 

 

 

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獣医師清水 いと世 (京都大学博士 / 農学)

山口大学農学部医学科卒業後、動物病院にて勤務。
10年ほど獣医師として勤務した後、動物専門学校で非常勤講師を務める。
その後、以前より関心のあった栄養学を深めるために、武庫川女子大学で管理栄養士の授業を聴講後、犬猫の食事設計についてさらなる研究のため、京都大学大学院・動物栄養科学研究室を修了。
現在は、栄養管理のみの動物病院「Rペット栄養クリニック」を開業し、獣医師として犬猫の食事にかかわって仕事をしたいという思いを持ち続け、業務に当たる。

 

 

 

 

 

 

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