獣医師のドッグフード研究コラム

第52回:犬の血液検査項目 -Cre(クレアチニン)-

 

こんにちは。獣医師の清水いと世です。

今回は、わんちゃんの血液検査の項目であるCre(クレアチニン)について説明します。

 

 

はじめに(この血液検査項目のコラムをはじめてご覧になる方はお読みください)

ここで取り上げている血液検査のひとつの項目のみで、わんちゃんの健康や病気の状態は判断できません。
動物病院では、他の血液検査の項目、触診や聴診のような身体検査、そしてレントゲンやエコー検査などを組み合わせて診断を行います。
ここの内容は、動物病院で受けた検査項目の確認や、かかりつけの獣医師から受けた説明の復習にご利用ください。

 

心配な血液検査結果は、わんちゃんのためにも、必ずかかりつけの動物病院に相談しましょう。
ネットで情報をピックアップして不安を増やしてしまうより、かかりつけの獣医師に直接ご確認いただいた方が、早めの解決につながります。

 

 

クレアチニンとクレアチンとクレアチンリン酸

血液検査の項目のCre(CRE)は、クレアチニンと呼びます。似たような名前にクレアチンがあり、これはグリシンとアルギニンとメチオニンというアミノ酸から合成されます。

 

クレアチンは運動をしていない時にATP(アデノシン三リン酸)という高エネルギー物質からエネルギーを得てクレアチンリン酸になり筋肉に蓄えられます。これは運動中に使用されるエネルギー源になります。

 

動物が蓄えるエネルギー源としては脂肪やグリコーゲンが有名ですが、運動によって急にエネルギーがたくさん必要になった際に、筋肉はこのクレアチンリン酸から効率よくエネルギーを得ることができます。

 

このクレアチンやクレアチンリン酸からクレアチニンは作られ、血液中を移動して腎臓でろ過され、尿より排泄されます。クレアチンは、クレアチンを含む肉などを摂取するか、肝臓でアミノ酸から合成することで補われます。

 

 

クレアチニンは主に腎機能の検査に用いられる

クレアチニンは血液から腎臓の糸球体でろ過されて尿へ排泄されるため、腎臓のろ過する機能が落ちると、尿への排泄量が減り血液中にクレアチニンが溜まっていきます。

 

そのため、クレアチニンは血液中の濃度だけでなく尿中の濃度も、腎機能の検査に利用されます。尿中クレアチニン濃度を用いた検査には、尿量などと合わせてクレアチニンが血中から尿中にどのくらい排出されたかを調べる糸球体ろ過率(GFR)の検査があります。GFRの検査は、クレアチニンの血液検査よりも早期に腎臓病を発見できますが、煩雑なため実施している病院はあまりありません。

 

尿蛋白クレアチニン比(UPC)は、尿中のタンパク質量を尿中のクレアチニン量に対する比で表した検査です。UPCが基準値より高い場合、尿にタンパク質が漏れ出ていて腎臓の病気が疑われます。

 

 

クレアチニン値が異常となる原因

血液検査のクレアチニンが高くなる原因は、通常、クレアチニンが作られる量が増えたり、尿から排泄される量が少なくなったりすることで、後者であることが多く、腎臓の機能が低下すると、クレアチニンの排泄量が減るため、血液中に溜まっていくことが原因です。

 

腎臓が悪くなくても、血液を流すポンプである心臓が悪かったり、脱水で血液量自体が減ったりすると、腎臓へ流れる血液が減少するため、クレアチニンのろ過量も減り、血液中のクレアチニンが増加することがあります。

 

血液検査のクレアチニン低下を心配することはあまりありませんが、クレアチニンが作られる量が減少したり、尿量が増加して腎臓から排泄される量が増加したりすることが原因として考えられます。

 

筋肉量が低下すると、クレアチニンが作られる量が減少するため、年を取って筋肉が落ちたり、長期にわたる闘病や食欲低下などで筋肉量が減少したりすると、血液検査のクレアチニンは下がることがあります。

 

この場合、クレアチニンが基準の範囲内でも、腎機能に問題がないとは限らず、高かったクレアチニンが下がっても腎臓がよくなったとは限りません。

 

 

楽しそうbにボール遊びをするビーグル犬

クレアチニン値とドッグフードの関係

腎機能の低下や病気を疑ったときの血液検査ではBUNの値も指標となりますが、その値はドッグフードに含まれるタンパク質量の影響を受けます。BUNほどではありませんが、クレアチニンも影響を受けます。

 

クレアチニンを多く含む肉類などを食べた後に血液検査をすると、クレアチニンが増加する場合があります。ドッグフードなどの影響を除くためには、10~12時間以上絶食してから血液検査を行うほうがよいでしょう。

 

 

クレアチニン値が異常の場合は原因究明と治療効果の確認のために追加検査を実施

血液検査でクレアチニンが増加した場合は、通常腎臓の異常を疑います。そのため、追加の血液検査や尿検査、レントゲン検査などが行われることがあります。

 

これらの検査は、腎臓病の確認だけでなく、腎臓病の治療や栄養管理の効果の確認、腎臓病の進行の確認のためにも定期的に行われます。

 

 

増加したクレアチニンを下げるためには原因に応じた治療や栄養管理が必要

腎臓病の進行の程度によって治療薬は異なります。クレアチニンが増加した原因が腎臓病の場合は、腎臓の血流をよくするための血管拡張剤、腎臓が悪くなったためにリンの排泄が悪くなった場合はリン吸着剤などがあります。

 

心不全によってクレアチニンが増加しているのであれば、心臓の治療がメインになります。

 

脱水は、それ自身もクレアチニンを増加させますが、腎臓病の悪化も促します。

脱水は体内に入ってくる水分量の減少や体内から出ていく水分量の増加によって引き起こされます。

 

前者の主な原因は食欲不振によるもので、食事量の低下で食事に含まれる水分摂取量も減少し、飲水量の低下も伴います。後者は嘔吐や下痢、そして尿量の増加が主な原因です。

 

脱水は、腎臓に流れる血液の量を減少させ、腎臓病を悪化させるため、点滴による水分補給が行われます。脱水が原因でクレアチニンが上がっている場合は、脱水の改善によりクレアチニンも下がることがよくあります。しかし急激に腎臓が悪化し、治療を行ってもクレアチニンも症状も改善しない場合があります。

 

 

まとめ

血液検査の項目、クレアチニンは主に腎機能の指標です。

クレアチニンは、筋肉のエネルギー源であるクレアチンから作られ、筋肉量によってクレアチニン量も変化します。

 

腎臓が悪くて増加したクレアチニンを下げるためには、その原因に応じた治療と栄養管理をしてもらいましょう!

 

 

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獣医師清水 いと世 (京都大学博士 / 農学)

山口大学農学部医学科卒業後、動物病院にて勤務。
10年ほど獣医師として勤務した後、動物専門学校で非常勤講師を務める。
その後、以前より関心のあった栄養学を深めるために、武庫川女子大学で管理栄養士の授業を聴講後、犬猫の食事設計についてさらなる研究のため、京都大学大学院・動物栄養科学研究室を修了。
現在は、栄養管理のみの動物病院「Rペット栄養クリニック」を開業し、獣医師として犬猫の食事にかかわって仕事をしたいという思いを持ち続け、業務に当たる。

 

 

 

 

 

 

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