獣医師のドッグフード研究コラム

第12回:犬と乳酸菌

 

 

こんにちは。獣医師の清水いと世です。
今回は、乳酸菌についてのお話をさせていただきます。

 

 

乳酸菌

乳酸菌とは、通常、乳酸を産生する細菌を指し、多くの種類があります。

代表的な乳酸菌には、乳酸桿菌(ラクトバチルス)や乳酸球菌(ストレプトコッカス)などがあります。

 

ビフィズス菌も乳酸を産生するため、乳酸菌の一種と扱うこともあります。
ヨーグルトなどの発酵乳や腸内細菌のイメージが強い乳酸菌ですが、それ以外にも、食品(漬物など)や動物の体、環境中に広く存在しています。

 

また、種類によって存在する場所が限られていて、「人には人の乳酸菌」という表現は、人の腸内で住むことを好む乳酸菌の種類ということです。

 

 

腸内細菌

腸内細菌とは腸内にいる細菌で、小腸にもいますが、大部分は大腸に存在します。

体に有益な善玉菌から、病原性を持ち、体に有毒な物質を作り出してしまう悪玉菌、通常は体に無害な日和見菌まで多くの種類が存在しています。

 

腸内細菌は、動物が消化できない食物繊維を分解、利用して、短鎖脂肪酸(酢酸、酪酸、プロピオン酸など)を作り出し、動物が吸収できる形にしてくれます。
この短鎖脂肪酸は、動物のエネルギー源として利用される以外に、遺伝子レベルでも作用し、免疫機能調節やエネルギー消費増加に関連しています。

 

また、腸内細菌は、ビタミンKやビタミンB12の合成なども行ってくれます。

 

少し話がそれますが、腸内細菌の作り出してくれた栄養素をうまく利用できるのは、牛やウサギです。

 

腸内細菌が最も活躍している場所は、牛の場合、反芻胃と呼ばれる胃、ウサギの場合は盲腸です。栄養素を吸収する主な場所は小腸です。

 

牛のように反芻胃で作られた栄養素はその後、小腸に流れ、そこから吸収されていきます。盲腸は小腸より後ろにありますが、ウサギは、排出された盲腸便(ふつうのコロコロしたうんことは違い、つやつやしたブドウの房状のうんこ)を食べることによって、その腸内細菌の作り出した栄養素を小腸に送るため、吸収することができます。

 

 

腸内フローラの善玉菌や悪玉菌の様子

犬の腸内細菌叢

犬の腸内細菌には、バクテロイデスなど多くの種類の細菌がいます。

善玉菌と言われる種類は、人では、ビフィズス菌が優勢ですが、犬では乳酸桿菌も多く存在します。

 

人では加齢に伴い腸内細菌叢のバランスが変わることがわかっていますが、犬も加齢に伴い乳酸桿菌などは少なくなる傾向があり、その菌の種類も変わったと報告されています。

 

ちなみに猫では、ビフィズス菌や乳酸桿菌は優勢菌ではなく、代わりに腸球菌(エンテロコッカス)が多かったと報告されています。

 

 

乳酸菌の作用

乳酸菌を摂取することにより、下痢や便秘の改善が期待されますが、他にも便臭の改善やおならの減少といった消化器に関する作用や、皮膚や免疫に関する作用も報告されています。

 

生きた乳酸菌を摂取して、それが生きて腸まで届いて、さらにその腸に定着することは難しいですが、生きていなくても同様の効果があることがわかっています。

 

下痢の原因はさまざまですが、悪玉菌は、腸管刺激性の毒素を産生するため、増加すると下痢の原因になります。乳酸菌には、他の微生物を抑制する作用があるため、悪玉菌の減少が期待されます。

 

IBD(炎症性腸疾患)の犬への乳酸菌製剤の投与によって、免疫寛容に関係するリンパ球が増えたという報告があります。また、腸内細菌が産生する酪酸もこの免疫寛容に対する効果が報告されており、乳酸菌製剤(プロバイオティクス:腸内細菌叢のバランスを改善する生きた微生物のことで、乳酸菌や酪酸菌など)と食物繊維(プレバイオティクス:腸内細菌が利用し、動物は消化できない食物繊維)を組み合わせた効果的なシンバイオティクスの開発が待たれます。

 

動物病院では、細菌感染症(外傷や皮膚病、腸内や膀胱内などの細菌感染)に、抗生物質(細菌を殺す薬)で治療を行います。病気の状態によっては、長期に抗生物質を飲まなくてはいけないこともあります。

 

塗り薬のように局所で使用する薬と異なり、飲み薬や注射によって投与された抗生物質は、全身に作用します。そのため、病変部位の細菌だけではなく、腸内細菌も一緒に弱ってしまうこともあり、これが原因で下痢になることもあります。

 

また、長期に下痢をしているような病気では、腸内細菌が増える間もなく下痢とともに排泄されるため、減少している場合もあります。このような腸内細菌の減少は、腸内細菌が合成してくれる大切な栄養素(ビタミンなど)の恩恵を得ることもできなくなります。

 

ビタミン剤として摂取するのも方法ですが、乳酸菌を摂取することで、少しでも腸内細菌の再生を図ることも必要です。

 

 

最後に

わんちゃんが元気に生活するためには、ドッグフードが必要です。ドッグフードから良い栄養を摂れるようにと、飼い主様はフード選びには余念がありません。

忘れがちですが、腸内細菌は、その栄養の一部に貢献していますし、免疫力やダイエットにも関係しています。健康のために、いい菌を育てて、共存したいですね。

 

乳酸菌を摂取しても、腸管に定着することは難しく、継続的な摂取が必要と言われています。わんちゃんのお腹の調子が悪いときには特に大切ですので、動物病院に相談しましょう。

 

 

 

 

 

犬の写真

獣医師清水 いと世 (京都大学博士 / 農学)

山口大学農学部医学科卒業後、動物病院にて勤務。
10年ほど獣医師として勤務した後、動物専門学校で非常勤講師を務める。
その後、以前より関心のあった栄養学を深めるために、武庫川女子大学で管理栄養士の授業を聴講後、犬猫の食事設計についてさらなる研究のため、京都大学大学院・動物栄養科学研究室を修了。
現在は、栄養管理のみの動物病院「Rペット栄養クリニック」を開業し、獣医師として犬猫の食事にかかわって仕事をしたいという思いを持ち続け、業務に当たる。

 

 

 

 

 

 

 

 

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