獣医師のドッグフード研究コラム

第23回:犬にグルテンフリーの食事は必要ですか?

 

 

こんにちは。獣医師の清水いと世です。

今回は、わんちゃんにグルテンフリーの食事が必要かどうかについてです。

 

 

グルテンとは

小麦などに含まれるタンパク質のことです。小麦の他、大麦やライ麦などにも含まれます。
ちなみに、グレイン(grain)とは、穀物のことです。

グルテン(gluten)と似ていますので、間違えないように気をつけましょう。

 

グルテンの中にグレインは含まれませんが、グレインの中にグルテンは含まれます。

つまり、穀物(グレイン)には小麦も含まれ、小麦の中にはグルテンが含まれています。

 

 

小麦の栄養

グルテンの含まれる代表的な食材は小麦です。

 

小麦には、糖質(炭水化物)のほか、タンパク質や脂質、ビタミンやミネラルも含まれます。

最も多く含まれている栄養素は炭水化物ですので、一般的に小麦は、食事の中では、炭水化物源として使用されています。

小麦で次に多く含まれている栄養素はタンパク質ですが、この種類にはアルブミンやグルテンなどがあります。

 

今回のタイトルにある「グルテン」は、小麦などに含まれるタンパク質の一種です。

 

 

グルテンフリー(Gluten Free)とは

フリー(free)は、自由な、含まない、無料で、という意味があり、グルテンフリーの食事は、グルテンを含む小麦や大麦などを使用しない、グルテン自身を含まない食事を指します。

 

間違えることのある、グレインフリーの食事とは、穀物を含まない食事です。最近、米国で問題となっている犬の拡張型心筋症の原因として疑われているドッグフードには、グレインフリーの表示が多かったため、FDA(米国食品医薬品局)は注意を呼び掛けていますが、こちらは、グレインの方です。

 

ではグルテンフリーの食事は注意しなくていいのでしょうか?

 

拡張型心筋症とドッグフードの関係は、グレインフリー食に限られているわけではありません。また、グレインフリー食にはグルテンフリー食が含まれるため、心臓の調子が悪い場合は、獣医師と相談の上、食事の見直しも考慮したほうがいいでしょう。

 

 

タンパク質源

上記したように、グルテンはタンパク質の一種です。
ドッグフードでは、小麦グルテンはタンパク質源になります。

 

タンパク質源として、家禽ミール(鶏や七面鳥のような食肉鳥類を使用した飼料)と小麦グルテンを用い、犬の消化性を比較した実験では、小麦グルテンの消化率の方が高かったと報告されています。

 

 

可愛い表情でこちらを見ているパグの様子

 

グルテン摂取の問題点

グルテンが原因でアレルギー性腸炎を起こす病気は、人ではセリアック病が有名です。

 

犬では、グルテンの関連する病気に、アイリッシュセッターという犬種のグルテン過敏性腸症の報告があります。

この犬種では、グルテンを摂取することで腸が過敏に反応し、下痢などになってしまうことがあり、遺伝的な関与が疑われています。

 

このような体質を持った犬にグルテンを与えると、腸の上皮に炎症細胞が増え、栄養の消化吸収する場所である腸が壊れてしまいます。

 

炎症を抑える薬で少し良くなることもありますが、この病気の場合は、グルテンフリー食を与えることがより良い改善につながります。もちろん、おやつにもグルテンが含まれないように注意しなければいけません。

 

アイリッシュセッターのわんちゃんすべてが、グルテンに対してアレルギーを持っているわけではありません。その一部のわんちゃんです。
また、アイリッシュセッター以外のわんちゃんが、グルテンに対するアレルギーを起こさないというわけでもありません。

 

グルテンを摂取することによって、下痢や嘔吐などの胃腸症状、皮膚や耳の痒みなどの皮膚症状など、異常な反応を示すようなわんちゃんには、グルテンフリーの食事が必要です。

 

 

アレルギーの検査

慢性的にアレルギー性腸炎や皮膚炎を起こしてしまっているわんちゃんで問題なのは、原因が特定しにくいことです。

 

・下痢が続く
・皮膚の痒みが落ち着かない
・外耳炎で耳の痒みがひどい

 

アレルギーによってこれらのような症状がある場合、その原因(アレルゲン)が除去できなければ、改善に結びつくことは難しいです。

 

食物アレルギーを疑い、ドッグフードの変更を試みることがありますが、食事が必ずしも原因とは限りません。これは特に皮膚症状のときは多いようです。

 

小麦や小麦グルテンのアレルギーを疑って小麦を含まない食事にしても、鶏肉にもアレルギーを持っていれば、変更した食事に鶏肉が含まれている限り改善されません。
原因は一つとも限りません。また、食材以外の原因もあり、遺伝的な問題がかかわっていることもあります。

 

動物病院では、原因特定のためのアレルギー検査がありますので、このような方法も利用しながら、改善への道筋を探しましょう。

 

アレルギー検査は、以前よりその種類や項目が増え、検査結果に基づいたドッグフードの変更により改善を認めるわんちゃんも多いようです。

 

 

小麦グルテンが心配な飼い主様へ

ドッグフードには小麦が含まれていることは多いですが、小麦アレルギーがなければ過剰な心配は必要ありません。しかし、不安が解消されない飼い主様が、このようなドッグフードを無理に選ぶ必要はなく、グルテンを含まない原料を使用したドッグフードを選択すればいいでしょう。

 

手作り食でグルテンを含まないようにする場合は、小麦などの使用を避けることになりますが、加工食品にも注意が必要です。通常、パンや麺類にはグルテンが含まれていますし、麩は、グルテンでできています。

 

インターネットの情報だけに左右されず、問題を解決するためにも、獣医師や専門家から直接意見を聞きましょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

犬の写真

獣医師清水 いと世 (京都大学博士 / 農学)

山口大学農学部医学科卒業後、動物病院にて勤務。
10年ほど獣医師として勤務した後、動物専門学校で非常勤講師を務める。
その後、以前より関心のあった栄養学を深めるために、武庫川女子大学で管理栄養士の授業を聴講後、犬猫の食事設計についてさらなる研究のため、京都大学大学院・動物栄養科学研究室を修了。
現在は、栄養管理のみの動物病院「Rペット栄養クリニック」を開業し、獣医師として犬猫の食事にかかわって仕事をしたいという思いを持ち続け、業務に当たる。

 

 

 

 

 

 

 

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