獣医師のドッグフード研究コラム

第54回:犬の血液検査項目 -GLU(グルコース・血糖値)-

 

こんにちは。獣医師の清水いと世です。

今回は、愛犬の血液検査項目のGLU(グルコース・血糖値)についてです。

 

「グルコース」は単糖類のブドウ糖を指す言葉でもあります。ここでは血液検査の項目名を「血糖値」、血液の中を流れる成分を「グルコース」という名称で説明します。

 

 

はじめに(この血液検査項目のコラムをはじめてご覧になる方はお読みください)

ここで取り上げている血液検査のひとつの項目のみで、わんちゃんの健康や病気の状態は判断できません。
動物病院では、他の血液検査の項目、触診や聴診のような身体検査、そしてレントゲンやエコー検査などを組み合わせて診断を行います。
ここの内容は、動物病院で受けた検査項目の確認や、かかりつけの獣医師から受けた説明の復習にご利用ください。

 

ネットで情報をピックアップして不安を増やしてしまうより、心配な血液検査結果は、かかりつけの動物病院で直接確認する方が、早めの解決につながります。

 

 

血糖値とは

血糖値とは血液中のグルコースの濃度のことです。

 

ドッグフードに含まれるでんぷんは、アミラーゼなどの消化酵素によって加水分解され、グルコースになります。グルコースは腸の細胞から血管へと吸収されていきます。

 

また、体内に蓄えているグリコーゲンを分解したり、アミノ酸などから合成(糖新生)したりすることで生じたグルコースも血管内を流れていきます。

 

このように、血糖値のグルコースには食事由来、あるいは体に貯蔵していた物質由来のグルコースがあります。

 

 

血糖値(血液中のグルコース)の役割

グルコースは体の組織の構成成分としても利用されますが、とても大切な役割は、脳をはじめとした細胞のエネルギー源になることです。

体内では、さまざまな物質を合成したり分解したりする化学反応が行われています。この反応のことを「代謝」と呼びます。代謝反応はエネルギーを作り出す反応もあれば、エネルギーを使って物質の合成や分解を行う反応もあります。

 

このエネルギーの受け渡しに使われるのがATP(アデノシン三リン酸)です。このATPの合成にグルコースはかかわっています。

ATPはこの生命活動で行われる代謝反応に必要であり、細胞内の代謝反応が適切に行われないと、その細胞で構成された各臓器の機能が上手く働かなくなり、生命は維持できなくなります。

 

また、このATPが作られる際に発生する熱は体温を上げるために使われます。

グルコースは体内でさまざまな重要な働きがあり、血糖値は常に一定に維持されなければいけません。

 

 

血糖値の維持

ドッグフードを摂取後、フードの消化が進みグルコースが生じます。このグルコースが吸収され血糖値が上がると、インスリンというホルモンが膵臓から分泌されます。インスリンは、血液中のグルコースを細胞内に取り込ませたり、グルコースからグリコーゲンや脂肪(脂肪の成分)を合成したり、血糖値を下げるように働きます。

 

一方、血糖値が下がるとグルカゴンが分泌され、グリコーゲンを分解してグルコースにしたり、糖新生を行ってグルコースを作ったりすることで、血糖値を上げます。

 

インスリンとグルカゴンは、血糖値を一定に維持する大切なホルモンです。インスリンはエネルギーを蓄積するように、グルカゴンはエネルギーを作り出すように代謝を調節します。

 

 

血糖値が異常となる原因

血糖値の異常でしばしば耳にするのは、血糖値の高くなる糖尿病です。その他、ストレス、膵炎、発情期、クッシングなどでも血糖値が異常となる場合があります。

一方、血糖値の低くなる原因は、幼若動物や妊娠時の栄養不良、インスリノーマなどの腫瘍、肝不全などが挙げられます。またインスリンのような薬剤の摂取も原因の一つです。

 

血糖値を一定に維持するためには、ドッグフードを摂取でき、そのドッグフードを消化吸収できる胃腸と体内に蓄積した栄養素からグルコースを作り出す臓器が健康であり、そして上がり過ぎたり下がり過ぎたりした血糖値に対する体の応答が正常でなければなりません。

 

 

血糖値が異常なときの症状

高血糖になると尿量が増えます。血液から尿を作る腎臓は、血糖値が高くなると尿中にグルコースを排泄してしまいます(糖尿)。このとき水分の排泄も増えるため、尿量が増えます。糖尿病で血糖値が高い状態が長期になると、痩せてきたり、白内障になったり他の症状も伴います。高血糖では具合の悪い症状がすぐには出ないため、気付かない場合もあります。尿量が増えた場合は動物病院に相談しましょう。

 

一方、低血糖はエネルギー源であるグルコースが全身に供給できなくなるため、元気がなくなり、震えや痙攣を起こす場合もあります。子犬のように蓄積している栄養が少ないと、食欲がなくなるだけで低血糖になり、熱も作れず低体温にも注意が必要になります。

 

 

血糖値が異常の場合は原因究明と治療効果の確認のために追加検査を実施

血糖値は低すぎても高すぎても、その原因を探すために他の血液検査項目やレントゲン、エコー検査を行います。原因が特定されても、血糖値を維持するために検査が繰り返されることもよくあります。

 

例えば糖尿病の場合、血糖値をコントロール(よりよい状態に管理する)ために、毎日飼い主さんが自ら愛犬にインスリンの注射を行う場合があります。インスリンの注射は少なすぎれば血糖値が十分に下がらず、多すぎれば低血糖を起こしてしまう危険があります。インスリン量を決めるためには、何度も血液検査を行い(1日に何度も血液検査を行う場合もあります)、インスリン量が決まっても、定期的に血液検査が必要です。

 

 

異常な血糖値を改善させるためには原因に応じた治療や栄養管理が必要

どのような薬でも投与量を守ることは大切ですが、特にインスリンの量は必ず守りましょう。量が多すぎると低血糖になってしまいます。体調が悪く食欲か落ちている場合は、体に吸収されるグルコースの量も少なくなります。インスリンの量も変更が必要になる場合もあるため、かかりつけの動物病院の指示を仰ぎましょう。

 

糖尿病に限らず、太り過ぎであれば減量(ダイエット)も必要ですし、痩せすぎであれば適正な体重になるような栄養管理が必要です。一般的に炭水化物源は食後の高血糖を防ぐために、直接吸収されるような単糖類の使用を控え、消化に時間のかかる多糖類や、消化吸収のスピードを抑える食物繊維の使用が推奨されます。

 

低血糖の症状がひどい場合、動物病院では血管点滴でグルコースを投与します。症状が軽く、口からの摂取が可能なら、消化の良い炭水化物を含むドッグフードを選びましょう。

 

 

まとめ

血糖値とは生命の維持に不可欠なグルコースの濃度です。
血糖値を一定に維持する仕組みが体には備わっています。
高血糖の初期は症状が少ないため、尿量が増えた場合は、動物病院に相談しましょう。

 

 

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獣医師清水 いと世 (京都大学博士 / 農学)

山口大学農学部医学科卒業後、動物病院にて勤務。
10年ほど獣医師として勤務した後、動物専門学校で非常勤講師を務める。
その後、以前より関心のあった栄養学を深めるために、武庫川女子大学で管理栄養士の授業を聴講後、犬猫の食事設計についてさらなる研究のため、京都大学大学院・動物栄養科学研究室を修了。
現在は、栄養管理のみの動物病院「Rペット栄養クリニック」を開業し、獣医師として犬猫の食事にかかわって仕事をしたいという思いを持ち続け、業務に当たる。

 

 

 

 

 

 

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