獣医師のドッグフード研究コラム

第43回:犬に与えていい食材と危険な食材について

 

 

こんにちは。獣医師の清水いと世です。
今回は、わんちゃんに与えていい食材と危険な食材についての説明です。
具体的な食材の列挙はしていません。ご了承ください。

 

 

食の安全性

私たちが口にする食の安全性では、食の経験や安全性を評価した研究などが考慮されています。食の経験は、ある食材をひとりが1回、少量食べた程度の経験ではありません。大勢の人が長い年月、その食材を一般的に食す量を食べ続け、問題がなかったという経験です。食の経験が乏しい食材の場合は、その安全性を調べなければいけません。

 

犬が口にするものは、食材以外にもサプリメントやフードへの添加物などもありますが、同様に安全でなければいけません。

 

犬の食材には、ヒトと同様の食材と、ドッグフード専用の飼料があります。ドッグフード専用の飼料の場合、食の経験や研究データが存在する場合もありますが、手作り食で用いられるような食材の場合、そのひとつひとつの食材の犬の経験や安全性の報告には限界があります。犬が食べて問題が生じてから原因追及されることが多いため、食べて安全というよりも問題のある食材の方が報告には上がってきます。

 

ある食材に有害な報告がないからといって、その食材が安全かどうかはわかりません。タマネギが推奨されない食材になったように、現在、犬に与えられている食材の中から中毒の報告が上がり、原因成分等の研究が進めば、その食材は与えない方がいい食材に仲間入りするかもしれません。

 

食の経験がある食材でも、調理や加工方法によっては問題が生じるかもしれません。
加熱をすれば安全だけど生だと危険だったり、抽出することによって危険な成分が濃縮されたり、安全性が変化する場合もあります。

 

併用した食材や加工することによって問題が生じてしまったペットフードもあります。海外で2019年頃に多く報告された拡張型心筋症は、その原因にドッグフード中の食材の関与が疑われています。

 

 

食す側(動物側)の違い

問題となる食材は、すべての動物で等しく問題が生じるとは限りません。

 

食べ物は摂取された後、消化管内で消化吸収され、その栄養素を体の中で代謝(分解や合成)します。代謝によって、エネルギーや体の必要な成分を作り出し、不要なあるいは毒性のある成分を排泄します。体内に吸収されてしまった中毒成分も同様に、肝臓などで代謝(解毒)され、尿や便から体外に排泄されます。この代謝反応はすべての動物で共通点も多くありますが、動物種や年齢や病気の有無などによって違う個所もあります。

 

犬猫に与えない方がいい食材の代表であるタマネギは、遺伝的に中毒を生じやすい犬種がいます。猫は犬よりもタマネギ中毒を生じやすく、動物の種類によっても毒性に差があります。

 

また、犬それぞれでも毒性は異なります。多くの成犬では問題とならない量でも、遺伝的な違い、肝臓のような内臓の発達が未熟な子犬、逆に内臓が衰えた老犬、肝臓や腎臓などに病気がある犬のように、犬の状態によっては上手く解毒が行われず、中毒のリスクが高まります。代謝反応の違いは、中毒の生じやすさの違いにもなります。

 

 

ブルドッグが料理をしている様子

中毒の報告が上がってしまった食材について

ネット上には、犬に与えたら危険な食材や、NG食材など、怖いタイトルを見かけます。
食材(食べ物)の危険性には、食材自体が持つ毒性と、食材は問題ないけど汚染(菌や寄生虫のような病原体)による感染や毒性があります。

 

食材中に中毒成分が含まれている場合、中毒成分の量も重要です。中毒成分の量が多ければ、その食材の少量摂取であっても危険ですし、中毒成分の量が少なくても、その食材を大量摂取すれば危険かもしれません。中毒成分の量があまりにも少なく、中毒を起こすだけの食材量を食べることができなければ、問題ないでしょう。

 

「犬には○○が危険!」と報告された場合、それが多くの犬にとって、一般的に食す量で中毒を生じるようであれば、危険です。

 

では、一例であれば、問題ないのか?

 

ほとんどの犬が問題なく解毒できる成分を、まれな体質で解毒できなかった犬が中毒を起こしただけの報告だったと明らかになれば、問題ないでしょう。
原因が解明されなければ、その食材が本当に危険かどうかはわかりません。

 

カビが原因で中毒を起こしただけで、食材自体は問題がないのであれば、危険な食材の仲間入りをさせてしまうことがないようにしましょう。

 

危険と名指しされた食材は、その食材中のどの成分が中毒成分なのか、それは食材として普通の犬がどの程度食べてしまうと中毒を生じる可能性があるのか、これが揃ってわかっていると、食の安心につながります。

 

 

犬への食材情報のために

犬に推奨されていない食材を、飼っているわんちゃんが食べて大丈夫だったからといって、他のわんちゃんに勧めることはやめましょう。中毒症状が軽くて気づいていなかっただけかもしれません。

 

与える食材が心配な場合、ネットで検索する方法もありますが、不安を煽る情報にたどり着いてしまうと、解決どころかかえって混乱してしまう場合もあります。かかりつけの動物病院のように、信頼のおける専門家に相談しましょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

犬の写真

獣医師清水 いと世 (京都大学博士 / 農学)

山口大学農学部医学科卒業後、動物病院にて勤務。
10年ほど獣医師として勤務した後、動物専門学校で非常勤講師を務める。
その後、以前より関心のあった栄養学を深めるために、武庫川女子大学で管理栄養士の授業を聴講後、犬猫の食事設計についてさらなる研究のため、京都大学大学院・動物栄養科学研究室を修了。
現在は、栄養管理のみの動物病院「Rペット栄養クリニック」を開業し、獣医師として犬猫の食事にかかわって仕事をしたいという思いを持ち続け、業務に当たる。

 

 

 

 

 

 

 

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