獣医師のドッグフード研究コラム

第8回:犬の食事の嵩(かさ)を増やす方法と注意点

 

 

こんにちは。獣医師の清水いと世です。

今回は食いしん坊のわんちゃんや減量(ダイエット)の必要なわんちゃんのために、食事の嵩を増やすための食材や方法、注意点についてのお話をさせていただきます。

 

 

「嵩を増やす」ときの注意点

太らないという目的を満たすためには、嵩を増やすときにカロリー(エネルギー)が増えてはいけません。このため、通常、嵩増しに使うのはカロリーのない、あるいは今食べている食事よりカロリーができるだけ少ないものを用います。

 

嵩増しをすることによる注意点は、必要な栄養素が取れなくなる場合があることです。

 

嵩を増やすことで、必要な食事量が食べられなくなると、体が必要とする栄養素(タンパク質や脂肪、ビタミン、ミネラルなど)も摂取することができなくなります。

 

嵩は増やしても、必要な栄養は摂取できるようにしましょう。

 

 

「嵩を増やす」ときに使うもの(食材とは限りません)と方法

1.水

市販のドッグフードや食材に水を混ぜることによって、カロリーを増やさずに嵩増しできます。

 

ドライフードの中には、簡単に水でふやける製品もありますが、一般的なドライフードは、水で浸すだけでは簡単にはふやけません。お鍋で煮てもなかなかふやけません。また、長時間、高温でドライフードを調理するとビタミンが破壊される心配もあるため、ふやけにくい製品は、砕くか、粉砕しましょう。

 

 

2.低カロリーの食材

どの食材も多かれ少なかれカロリー(エネルギー)はあると考えてください。

 

野菜のカロリーは低めですが、高カロリーな野菜もあります。
植物由来の食材で考えると、イモ類、カボチャ、豆類はカロリーが高めです。
葉野菜は、カロリーが低めのことが多いです。

 

肉類の中では、ささみは低カロリーですが、食材全体で見れば、十分、カロリーがあります。

 

おからは、豆腐製造時に豆乳を絞る際の副産物というイメージからか、カロリーが低いと思われていますが、十分にカロリーがあります。

 

カロリーを気にするのはいいことです。今は、インターネットを使える環境にあれば、文部科学省が公表している食品成分データベースで、簡単にカロリーや栄養素量を調べることができます。もちろん、人間用ですが、食材間の比較や目安にするには非常に便利です。ご利用ください。

 

以下は、食品成分データベースからの抜粋です(注意:おすすめの食材ではありません)。

犬の食事のかさましの参考になるエネルギー表

ドライタイプのドッグフードの多くは、フード重量100 gあたり350 kcal以上あるようです。
缶詰タイプは、さまざまです。水分を多く含む製品はもちろん、カロリーが低くなります。

 

「水」と異なり、嵩増しに食材を用いるときは、栄養素の過剰にも注意しないといけません。十分食べているのに、さらに嵩増しフードでカロリーも過剰にならないようにしましょう。

 

嵩増し食材の嵩増しに貢献している成分は、水分や食物繊維です。食物繊維により犬の食事の嵩を増やすことは、満腹感が得られ、食事摂取量が減少することがわかっています。

 

 

「嵩を増やす」以外に私たち飼い主ができること

1.わんちゃんと一緒に食事を我慢する。

ドッグフードを食べる勢いが悪いために、美味しすぎるフードを選んでいませんか。ドッグフードを美味しそうによく食べる姿は、見ていてうれしいですが、その美味しすぎるフードをわんちゃんは、我慢しなくてはいけません。
適切なフードを与えましょう。

 

2.早食い防止食器を使用する。

 

3. 1回の食事を2回に分け、早食い完食した後、数十分後に2回目のごはんを与える。

1日に何回も与えるのではありません。
食事の内容によりますが、消化に時間のかかるような食事を1日に何度も与えると、常に胃の中に食事が存在することになってしまいます。空腹時間を設けることも必要です。

 

4.ダイエット用(減量用)のフードにする。

ダイエット用のフードは、カロリーの低い食物繊維を使用したり、空気を含ませたりすることで嵩増ししたり、粒の形状を大きくする工夫を行っていたりします。またこれら市販フードは、通常、カロリーは抑えても栄養素は不足しないような配慮がされています。

 

ダイエット用のフードの中には、炭水化物の量を抑えてタンパク質の量を増やしたフードもあります。これは、栄養組成の研究から考案された減量のための食事であり、推奨されます。

 

5.食事を変更する。

栄養が不足していては、犬の欲求は続くかもしれません。
例えば、タンパク質や脂肪の足りない食事であれば、これらを十分に含む食事に変更しましょう。

 

 

体重計に乗って体重管理をされている犬の様子

おわりに

 

ダイエットが目的であれば、体重測定を行いましょう。
1日1日の体重の増減で一喜一憂せず、長い目でダイエットには取り組んでください。

 

心臓や足腰が悪くなって、運動できないような状態になってしまうと、ダイエットはますます難しくなります。過保護になりすぎず、しっかり筋肉がつくような環境を作りましょう。

 

「嵩増し」に挑戦したいけど、栄養の過不足が心配な場合、カロリー計算などが面倒な場合は、専門家にご相談ください。

 

 

 

 

 

犬の写真

獣医師清水 いと世 (京都大学博士 / 農学)

山口大学農学部医学科卒業後、動物病院にて勤務。
10年ほど獣医師として勤務した後、動物専門学校で非常勤講師を務める。
その後、以前より関心のあった栄養学を深めるために、武庫川女子大学で管理栄養士の授業を聴講後、犬猫の食事設計についてさらなる研究のため、京都大学大学院・動物栄養科学研究室を修了。
現在は、栄養管理のみの動物病院「Rペット栄養クリニック」を開業し、獣医師として犬猫の食事にかかわって仕事をしたいという思いを持ち続け、業務に当たる。

 

 

 

 

 

 

 

 

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