獣医師のドッグフード研究コラム

第4回:犬のてんかん

 

 

てんかんとは

脳の異常な活動によって起こる慢性疾患です。脳の神経細胞には、通常、微弱な電流が流れていますが、過剰な電気活動が生じることによって、てんかん発作が起こります。

 

 

犬のてんかんの症状

体の一部が勝手にピクピク動く軽度な症状から、全身をガクガク、バタバタさせたり、ピーンとつっぱったりと、さまざまな症状が認められます。通常、数分以内に落ち着きます。

発作が生じる前に、ふるえたり落ち着きがなくなったりする前兆(発作前の行動)が認められることがあります。

発作の後は、すぐに普通の状態に戻ることもあれば、しばらくボーっとしていることもあります。

 

てんかん発作が繰り返し生じる、てんかん重積という状態があります。この場合、命にかかわる可能性が高いので、早めに治療が必要です。

 

 

犬のてんかんの原因

脳に腫瘍や感染(ウイルスや細菌、寄生虫など)、免疫異常による炎症、そして交通事故などによる外傷や遺伝など、さまざまな原因があります。

 

脳は頭蓋骨で守られているために検査が行いにくく、ゆえに原因追究が難しく、時に、原因を突き止められないこともあります。

 

 

犬のてんかんの検査

動物病院でてんかんと診断するためには、てんかん発作の確認が必要です。

自宅で発作に気づいて動物病院につれて行っても、動物病院で発作の症状を起こすことは少ないため、飼い主様の見た発作の状況を獣医師に伝えなくてはいけません。動画を撮影できれば、診断の手助けになります。

 

症状からてんかん発作が疑われる場合、神経学的検査(瞬きの反応や歩き方など神経の異常を確認する検査)の他、血液検査や尿検査、レントゲンやエコー検査が行われることもあります。

 

脳に異常がなくても、肝臓や腎臓が悪いと、発作の原因になるような物質の処理や排泄ができずに蓄積し、発作が生じます。また、低血糖や低カルシウム血症でも発作が生じます。

 

脳内の原因を探すために、MRIや脳脊髄液検査、脳波の検査を行うこともあります。MRIなどを行う場合には、検査中に動いてはいけませんので、通常、全身麻酔をします。

 

脳内の原因を探すために、MRIや脳脊髄液検査、脳波の検査を行うこともあります。MRIなどを行う場合には、検査中に動いてはいけませんので、通常、全身麻酔をします。

 

 

犬のてんかんの治療について説明している犬

犬のてんかんの治療

てんかんを起こす原因が治療できる場合、原因の治療が行われます。原因が治れば、てんかんも通常改善されます。

 

てんかん発作に対する治療は、抗てんかん薬(フェノバルビタール、ゾニサミド、臭化カリウム、ジアゼパムなど)の飲み薬による治療が主になります。これらは、原因を治す治療ではありません。てんかん発作を起こりにくくする(発作の回数を減らす)治療になります。

 

てんかん発作の原因が治療できない、あるいは原因が特定できない場合、長期に抗てんかん薬を飲まなくてはいけません。抗てんかん薬を有効にそして安全に使い続けるために、定期的な血液検査なども必要になります。

 

残念ながら、人と同様に3割の犬は、飲み薬によるてんかんのコントロールがうまくいかない難治性のてんかんです。

 

 

食事について

人のてんかん患者(特に子供)では、ケトン食が用いられることがあります。この食事療法は、管理栄養士や医師の指示により厳密に管理されながら行われます。

 

ケトン食は高脂肪低タンパク質低炭水化物の食事です。脂肪からエネルギー源として生成されたケトンを利用するため、ケトン食と呼ばれます。

 

一般的な脂肪中の脂肪酸は長鎖脂肪酸ですが、中鎖脂肪酸という脂肪酸の長さが短い脂肪は、体内のケトン産生の多いことが知られています。中鎖脂肪酸にはいくつか種類がありますが、ラットを用いた実験では、その種類によって発作に対する効果の違いが報告されています。

 

また、中鎖脂肪酸を用いることにより薬剤の作用が増加する可能性も指摘されており、てんかんの食事療法を行う際は、動物病院に相談しながら、行いましょう。

 

犬のてんかんに期待される食事に、中鎖脂肪の割合を増やした食事(ドッグフード)があり、海外で販売されています。

 

特発性てんかん(脳内の発作の原因が、腫瘍など構造上の異常の認められないタイプのてんかん)の犬に3か月間与えた研究では、発作の回数が減ったと報告されており、国内での販売が待たれます。

 

 

人のケトン食は、この犬のてんかんのための食事とは栄養素量が異なり、犬に与えることによる有効性や安全性は不明です。

 

ケトン食は、人でもてんかんのタイプや年齢によっても有効性が異なるともいわれており、種類の異なる犬で、同様の効果が期待できるかはわかりません。また、高脂肪食は、膵炎を誘発するリスクもあります。

 

 

人では、食物が原因による発作の報告があり、食事の変更で改善が認められています。犬でも同様の報告がありますが、詳細は不明です。

 

犬にケトン食を与えることによる副作用の心配と比べれば、今食べている食事の変更を試してみることは行いやすいかもしれません。

 

 

人のてんかん発作の改善のために、様々な栄養素や食材、サプリメントが注目されています。犬のてんかん発作の改善にも期待されますが、安全性や有効性がどこまで立証されているのかわかりません。

 

総合栄養食のドッグフードを食べている場合、通常十分量の栄養素が含まれています。わんちゃんのてんかん発作の改善を期待して、人のてんかん発作で注目されている食事やサプリメントを用いる場合、わんちゃんが体調を崩さないように、そして、てんかん自体が悪化しないように、動物病院に相談しながら行いましょう。

 

 

飼い主になでてもらっている犬

てんかん発作が起こったときにできること、してはいけないこと

はじめて発作を目撃した場合、どう対処していいのか、不安と焦りでいっぱいになると思います。発作の症状が軽く、すぐに治まればいいのですが、長く続いたり、全身をガクガクさせ、口から泡を吹いていると、とても心配になります。できることは限られますが、慌てずに対処してください。

 

 

1.発作は長く感じますが、通常数分で落ち着くということを思い出して、飼い主様が落ち着いてください。

 

2.症状にびっくりして愛犬をゆすってしまいそうになりますが、無理にゆすったりはせず、冷静に周りを見渡し、わんちゃんが発作のためにテーブルの角など、何かにぶつかったり、段差から落ちたりしないように、周りの環境を整備してください。

 

3.口元は、発作中は触ってはいけません。飼い主様が咬まれては、発作後のわんちゃんをケアできなくなります。

 

4.動物病院に連絡する。

 

 

発作を目撃した時は、動揺してしまいますが、激しい発作の時は、通常、意識を失っているため、犬自身は苦しくないと言われています。愛するわんちゃんのためにも、落ち着いて上記対処を試みてください。

 

飼い主様の不安が大きい場合は、動物病院にすぐに連絡し、車などの運転による来院は避け、タクシーなどを利用しましょう。

 

 

 

 

 

犬の写真

獣医師清水 いと世 (京都大学博士 / 農学)

山口大学農学部医学科卒業後、動物病院にて勤務。
10年ほど獣医師として勤務した後、動物専門学校で非常勤講師を務める。
その後、以前より関心のあった栄養学を深めるために、武庫川女子大学で管理栄養士の授業を聴講後、犬猫の食事設計についてさらなる研究のため、京都大学大学院・動物栄養科学研究室を修了。
現在は、栄養管理のみの動物病院「Rペット栄養クリニック」を開業し、獣医師として犬猫の食事にかかわって仕事をしたいという思いを持ち続け、業務に当たる。

 

 

 

 

 

 

 

 

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