獣医師のドッグフード研究コラム
第35回:犬の尿路結石 -後編-
こんにちは。獣医師の清水いと世です。
今回は、犬の尿路結石について前編と後編に分けて説明しています。
後編は、犬の代表的な尿石であるストルバイトとシュウ酸カルシウムについて説明します。
犬のストルバイト結石について
ストルバイトは、リン酸アンモニウムマグネシウムともいいます。マグネシウムなどを制限した食事もありますが、犬の場合、感染症のコントロールが重要です。
・犬のストルバイト結石の原因
猫と異なり、犬のストルバイト結石の多くは、ウレアーゼ産生菌の尿路感染が原因です。この細菌の作り出すウレアーゼという酵素は、尿中に排泄された窒素老廃物である尿素をアンモニアに分解し、尿中のアンモニアを増やしてしまいます。
・犬のストルバイト結石の治療
犬の主な原因は細菌感染ですので、まずは感染症の確認と抗生物質による細菌感染の治療が優先になります。
膀胱に細菌感染が生じると、通常、血尿や頻尿といった膀胱炎の症状が起こります。膀胱は尿を貯める役割がありますが、炎症によってその機能が損なわれると、尿を貯めることができず、少しでも尿が貯まるとすぐに排泄してしまいます。何度も、または長い時間排尿ポーズをとることもあります。細菌感染があっても、このような症状がない場合もあるため、ストルバイト結石を繰り返し起こしてしまう場合は、定期的に尿検査を行い、感染の確認が必要です。
結石がある場合は、尿を酸性化する食事や薬によって結石を溶解させる治療を行います。手術などによって結石の摘出が必要になる場合もあります。
わんちゃんによって治療方法は異なるため、ストルバイト結石がある場合、かかりつけの動物病院で相談しながら治療を進めましょう。
・犬のストルバイト結石の食事
ストルバイト結石の場合、結石形成を予防するための食事や、結石を溶かすための食事があります。動物病院で処方される療法食では、尿を酸性化する特性を持たせたり、マグネシウムを制限した栄養組成にするなど、配慮がなされています。
犬の場合、尿路の細菌感染が原因のことが多いため、尿の細菌検査を行い、感染があれば抗生物質による治療が優先されます。ストルバイト結石のための療法食は、獣医師が必要と判断した時に、処方されます。
結石のサイズによりますが、結石溶解には、専用の療法食を使用して、通常、数週間から数か月の治療期間が必要です。
細菌性のストルバイト結石だった場合、細菌感染が治癒し、結石も溶解できれば、ストルバイト結石は治ります。しかし、再び細菌感染が起こり、結石が再発してしまうこともあります。定期的に尿検査をしましょう。
犬のシュウ酸カルシウム結石について
シュウ酸カルシウム結石はストルバイトと異なり、薬や食事で溶解できないだけでなく、手術等で結石を取り除いても再発することのある管理が難しい病気のひとつです。
・犬のシュウ酸カルシウム結石の原因
高カルシウム血症は、原因のひとつと考えられています。高カルシウム血症がある場合、さらにその原因を探すための検査が必要です。
また、血中のカルシウム濃度は正常だけど、尿中へのカルシウム排泄が多い場合も結石形成のリスクが高くなります。
・犬のシュウ酸カルシウム結石の治療
原因がわかれば、その治療になります。
シュウ酸カルシウム結石の形成リスクを減らすために、薬などを使用する場合もあります。
できてしまった結石に関しては、溶解することができないので、除去するためには通常、手術等が必要です。尿と一緒に、自然に結石が排出されればいいのですが、大きなサイズだと尿道を通ることができません。シュウ酸カルシウム結石はストルバイト結石より、ゴツゴツした形状のため、膀胱や尿道粘膜を傷つけやすく、血尿が生じることも多々あります。
散歩でしかトイレをしない場合、血尿の色がわかりにくいため、尿の色を確認するために、ペットシーツ持参でお散歩するといいでしょう。尿道の途中で結石が引っかかって塞いでしまい、尿自体も出なくなってしまうと、命にかかわります。排尿ポーズをとるのに尿が出ない、ぐったりするなどの症状があれば、すぐに動物病院に連絡しましょう。
・犬のシュウ酸カルシウム結石の食事
シュウ酸カルシウム結石を溶解するための食事はありません。
シュウ酸カルシウム結石を予防するための療法食は、カルシウムを制限したり、尿をアルカリ化するような配慮がなされています。療法食だけを与えていても、再発する場合もあります。コントロールの難しい結石ですので、動物病院でより良い管理方法を相談しましょう。
療法食について
療法食の使用は、尿路結石の診断を受けた獣医師の指示を必ず仰いでください。
療法食を与え続けていれば、尿路結石が必ず治る、または必ず予防できるとは限りません。
漫然とした療法食の使用によって、知らない間に結石の再発、悪化、または異なるタイプの結石の発生等が起こらないようにしなくてはいけません。
わんちゃんのために、療法食の使用時は、定期的な尿検査やレントゲン検査などのチェックを行いましょう。療法食の継続や他の療法食への変更の指示、またはいつものドッグフードへの復帰の許可を獣医師から仰ぎましょう。
- おすすめ記事 -
獣医師清水 いと世 (京都大学博士 / 農学)
山口大学農学部医学科卒業後、動物病院にて勤務。
10年ほど獣医師として勤務した後、動物専門学校で非常勤講師を務める。
その後、以前より関心のあった栄養学を深めるために、武庫川女子大学で管理栄養士の授業を聴講後、犬猫の食事設計についてさらなる研究のため、京都大学大学院・動物栄養科学研究室を修了。
現在は、栄養管理のみの動物病院「Rペット栄養クリニック」を開業し、獣医師として犬猫の食事にかかわって仕事をしたいという思いを持ち続け、業務に当たる。
- 第1回:犬の食事に含まれる三大栄養素の割合
- 第2回:犬の痒みの訴え
- 第3回:犬にとっての必須栄養素 ビタミンE
- 第4回:犬のてんかん
- 第5回:家庭内に潜む犬にとって危険な食べ物 パート1
- 第6回:家庭内に潜む犬にとって危険な食べ物 パート2
- 第7回:犬にとってのビタミンD
- 第8回:犬の食事の嵩(かさ)を増やす方法と注意点
- 第9回:犬にとってのビタミンK
- 第10回:犬が酵素を取り入れることの意味
- 第11回:犬にとってのビタミンA
- 第12回:犬と乳酸菌
- 第13回:犬にオリゴ糖を与えて期待できること
- 第14回:犬の熱中症の怖さと対策方法
- 第15回:愛犬の食欲が少し落ちたときにできること
- 第16回:犬に必要な栄養素 チアミン(ビタミンB1)
- 第17回:ドッグフードを変えると同じカロリーでも太っちゃうわんちゃんへ
- 第18回:犬の心臓病 うっ血性心不全
- 第19回:犬に必要な栄養素 リボフラビン(ビタミンB2)
- 第20回:犬の胆泥症 <前編>
- 第21回:犬の胆泥症 <後編>
- 第22回:犬に必要な栄養素 ナイアシン(ビタミンB3)
- 第23回:犬にグルテンフリーの食事は必要ですか?
- 第24回:犬に必要な栄養素 - ビタミンB6 –
- 第25回:犬に穀物は必要?
- 第26回:犬に必要な栄養素 -パントテン酸(VB5)-
- 第27回:ドッグフードと犬の拡張型心筋症の関係
- 第28回:犬に必要な栄養素 – 葉酸(ビタミンB9) –
- 第29回:犬に必要な栄養素 – ビタミンB12 –
- 第30回:ドッグフードがない!そんな時のドッグフード代わりの今日だけ手作り食
- 第31回:犬に必要な栄養素 – コリン –
- 第32回:犬に必要な栄養素 カルシウム(Ca)
- 第33回:犬のストレス
- 第34回:犬の尿路結石 -前編-
- 第35回:犬の尿路結石 -後編-
- 第36回:犬の日光浴
- 第37回:犬に必要な栄養素 リン(P)
- 第38回:犬のよだれが多いとき
- 第39回:犬に必要な栄養素 マグネシウム(Mg)
- 第40回:犬に必要な栄養素 -ナトリウム(Na)と塩素(Cl)-
- 第41回:犬に必要な栄養素 -カリウム(K)-
- 第42回:犬に必要な栄養素 -鉄(Fe)-
- 第43回:犬に与えていい食材と危険な食材について
- 第44回:犬に必要な栄養素 -銅(Cu)-
- 第45回:犬に必要な栄養素 - 亜鉛(Zn)-
- 第46回:犬に必要な栄養素 - マンガン(Mn)-
- 第47回:犬に必要な栄養素 - セレン (Se) –
- 第48回:犬に必要な栄養素 - ヨウ素(I)-
- 第49回:犬の血液検査項目 ‐ ALT(GPT)‐
- 第50回:犬の血液検査項目 -BUN(血中尿素窒素)-
- 第51回:犬の血液検査項目 -AST(GOT)-
- 第52回:犬の血液検査項目 -Cre(クレアチニン)-
- 第53回:犬の血液検査項目 -Ca(カルシウム)-
- 第54回:犬の血液検査項目 -GLU(グルコース・血糖値)-
- 第55回:犬の血液検査項目 - P(リン)-








