獣医師のドッグフード研究コラム
こんにちは。獣医師の清水いと世です。
今回は、ドッグフードを切らしてしまったときのような、一時的にドッグフードの代用として使う手作り食をご紹介します。
ここでいう手作り食とは、私たち人間が食べる食品を用いて、わんちゃんのために作る食事のことです。
今回紹介する手作り食は、基本的にはドッグフードを食べていて、その代わりに一時的に使う場合の大人のわんちゃんを対象にした食事です。
長期に与えることを目的とした手作り食ではありません。
また、アレルギーなどの疾患があるために動物病院から栄養指導を受けているようなわんちゃんには用いないでください。このような場合はかかりつけの動物病院に相談しましょう。
炊いたごはん 150 g(ごはん1膳)
豚肉(赤身) 100 g
キャベツ 50 g
ニンジン 50 g
味噌 6 g(小さじ1杯)
ごま油 4 g(小さじ1杯)
5 kgの体重以外のわんちゃんの場合、カロリー計算をもとに、食材量を変更してください。
例えば、
2 kgのわんちゃんのカロリーが200 kcalなら、半分の食材量にしてください。
12 kgのわんちゃんのカロリーが600 kcalなら、2倍の食材量にしてください。
ごはんを炊きます。
ニンジンやキャベツを食べやすいサイズに切ります。
豚肉も食べやすいサイズに切ります。
(みじん切りでもぶつ切りでもかまいません)
鍋に水とニンジンを入れて、火にかけます。グツグツ。
(水は水道水でかまいません)
ニンジンの歯ごたえが弱くなったら、キャベツと豚肉を入れます。グツグツ。
気になるなら、灰汁を少し取ります。
キャベツと豚肉に火が通ったら、味噌、ごま油を入れ、さらに炊いたご飯も混ぜ、火を止めて出来上がりです。
食材のサイズは、飲み込めるサイズであれば問題ありません。
美味しいものだけを選んで食べないようにみじん切りにするのは方法ですが、無理のないように与えましょう。
ニンジンは固めだと、消化できずにそのまま便に出てしまうことがあります。その分の栄養は吸収できませんが、お腹を壊すことがなければ、一時的に利用した手作り食ですので過剰な心配はいりません。
調理に使う水は、どのような水でもかまいませんが、産地によってはミネラルのような特定の成分を多く含む場合もあります。尿路結石などの疾患がある場合は動物病院に相談しましょう。
食材の茹でこぼしの前処理を行ってもかまいませんが、過剰な茹でこぼしや灰汁取りの必要はありません。
ごはんを長く煮込んでしまうと粘りが強くなってしまいます。わんちゃんによってはこのネチョネチョが嫌いだったり、食べづらかったりするため気をつけましょう。
食材の計量は、一度は行いましょう!
まず、歯ごたえや味、そして熱さをチェックしましょう。
熱すぎませんか? ふーふー。
わんちゃんの食器(フードボール)を準備しましょう。
わんちゃんの食器に手作り食を盛りつけましょう。
内部が熱すぎないか、確かめながら盛りつけましょう。ふーふー。
今日は、いつものドッグフードを切らしてしまったことを詫びつつ、食べてもらいましょう。
多めに作って、一緒に食べてもいいでしょう。
・美味しそうに食べてくれた!
おめでとうございます。次は、栄養バランスの良い手作り食にチャレンジするのもいいでしょう。
・何とか、食べた!
美味しそうに食べてくれなかったのは、手作り食を食べなれていなかったせいかもしれません。
慎重なわんちゃんなのかもしれません。
お味噌やごま油が嫌いだったのかもしれません。
食べてほしくて見つめる、飼い主様の視線が熱すぎたのかもしれません。ふーふー。
・好きなものは(お肉は)、食べた!
自己主張のあるわんちゃんです。
ニンジンも食べなさい!なんて言わずに、片づけましょう。
無理に与えると、手作り食が嫌いになってしまいます。
・食べなかった!
残念ですが、このレシピが嫌いなのかもしれません。
他のレシピや調理方法なら食べてくれるかもしれませんが、手作り食自体が嫌いかもしれません。
他の食べ物を探してあげましょう。
・食べたけど、足りない!(もともとよく食べるわんちゃん)
野菜を2倍まで増やしたり、水分量の多いおじやにして対応してもかまいません。
・食べたいけど、食べきれない!(もともと小食のわんちゃん)
野菜を減らしたり、水分量の少ない炒飯のような調理に変更してもかまいません。
手作り食の食材(人間用の食品)はあるけど、ドッグフードは切れてしまうという事件が今後は起こらないように注意しましょう。
ドッグフードが切れた事実をわんちゃんが知ったら、悲しむでしょう。
今回のレシピはドッグフードを切らした時のような緊急時用の手作り食として、手に入りやすい食材で簡単に作れるようにしています。
わんちゃんの栄養基準を満たすためには、レバーなど他の食材や、亜鉛などのサプリメントが必要です。
一時的な手作り食を与えたことで栄養素の過不足が生じることはありませんが、長期に手作り食を行う場合は、栄養素量を計算してバランスよく作ることを心がけましょう。
栄養素の算出は、毎回行う必要はありませんが、何度か行っていると、どの栄養素が過不足になり、どの食材やサプリメントを使えばいいのかわかるようになります。
今回のレシピでは、カルシウムや亜鉛、鉄、ヨウ素などのミネラル、そしてビタミンDやビタミンE、ビタミンB12などのビタミンは基準の半分を下回っています。
注文し忘れていいたドッグフードが届き次第、変更しましょう。
栄養バランスも考えながら手作り食を行いたい場合、栄養計算が合っているか不安な場合は、専門家や動物病院に相談しましょう。
獣医師清水 いと世 (京都大学博士 / 農学)
山口大学農学部医学科卒業後、動物病院にて勤務。
10年ほど獣医師として勤務した後、動物専門学校で非常勤講師を務める。
その後、以前より関心のあった栄養学を深めるために、武庫川女子大学で管理栄養士の授業を聴講後、犬猫の食事設計についてさらなる研究のため、京都大学大学院・動物栄養科学研究室を修了。
現在は、栄養管理のみの動物病院「Rペット栄養クリニック」を開業し、獣医師として犬猫の食事にかかわって仕事をしたいという思いを持ち続け、業務に当たる。