PERORIが考えるドッグフードとドッグライフ
パグやフレンチブルドッグ、ビーグル、コーギーと犬の中には驚くほど食欲が旺盛な犬種がいます。ドッグフードを与えると、まるで飲み込むかのように勢いよく食べ、喉に詰まらせてしまうこともあります。
この食べ方は、単なる笑い話ではなく、時には愛犬に危険をもたらすこともあるので、事前の対策が必要です。
犬は本来、食べ物を喉に詰まらせることはありません。犬は野生の狼の食性をそのまま受け継ぎ、食べ物は口に収まるサイズであれば、噛まずに丸呑みをします。その後、胃の中でゆっくりと時間をかけて消化をします。
この仕組みは、野生の環境で獲物を瞬時に自分のものとして確保する為であり、獲物を口にした後は、すぐにその場から離れることができるようにという習性からです。
基本的にはこの習性をもっているので、犬がドッグフードを人間のように、歯でしっかりと噛み砕くことなく飲み込んでしまっても、本来は問題ありません。
ただ、問題になるのは飲み込んだドックフードが、胃に到達する前の喉の時点で詰まってしまうことです。
ドッグフードは品質保持のため、含有水分量を10%未満に加工されています。
私達が日々口にする食材には60~70%もの水分が含有されていますから、含有量10%の食べ物といえば、口に入れた瞬間にパサつきを感じ、そのままでは飲み込めないほどです。
ドッグフードは飲み込むことで唾液や胃液を吸収し、急激に含有水分量が増加し、膨張します。
ただ、喉の時点では、まだ膨張して柔らかくなるほどの水分量を得ることができていません。わずかな水分で、ドッグフードの表面の粒同士が密着し、一つの大きな塊状になってしまうことがあります。
その為、一旦塊になってしまったドッグフードは、そのまま飲み込むことも吐き出すことも出来ず、喉につまってしまいます。
この状態は、愛犬自身が咳や嘔吐で吐き出すことができれば問題ありませんが、もし自分で吐き出すことが出来なければ、窒息する危険があります。
愛犬がドッグフードを詰まらせてしまった時は、抱き上げる事の出来るサイズの愛犬であれば、抱き上げたり、立膝の上に愛犬を乗せ、頭を下に向けた状態で背中を軽く叩いてあげましょう。
人間が喉に食べ物を詰まらせてしまった時のように背中側を叩きます。軽くむせたり、咳込んだのちにドッグフードを吐き出し、そのまま平常に戻れば問題ありません。
大型犬、愛犬がパニックを起こしているなどの状況で、抱きあげることができない場合は、首輪を持ち、愛犬をまずは一か所に立ち止まらせます。愛犬の頭を下に向け、軽く背中を叩いてあげましょう。
また、喉の奥で詰まっている場合、後ろ足を地面につかせたまま、前足を高い位置に持ち上げ、立ち上がらせた状態でのどをやや強く上下にさすってあげましょう。詰まっているものが喉を通り越し、胃の方へ移動すれば窒息することはありません。
・数回咳込んでも吐き出せない
・外見でわかるほどに喉に異物感がある(詰まったものの形状が外見でわかるほど膨らんでいる)
・息苦しそう
・呼吸が浅い
・手足をばたつかせる
などの異変がある時は、至急動物病院に連絡をして、応急処置の指示を仰ぎましょう。
場合によっては切開手術の必要が生じることもあるので、かかりつけ医に正しく状況の報告をすることが大切です。
ドッグフードを喉に詰まらせてしまう事故は、愛犬の性格によって、軽度ながらも日々習慣のように起こる場合もあれば、それまでまるで問題がなかった愛犬が、突発的に起こすこともあります。
愛犬の万が一の事故を予防する為にも、食事は飼い主の目が届く時間に、目が届く場所で与えることが理想的です。
特に食欲旺盛な犬種、多頭飼いの場合、授乳中の母犬は、食事の様子に突発的な変化が生じることがあるので注意が必要です。
外出の直前にドッグフードを与える、一皿に複数の犬が同時に口を付けるなどの行為は、万が一のトラブルにつながる可能性があるので特に注意をしましょう。
また知人の犬を一時的に預かっている、里親として引き取って日が浅い犬など、環境に慣れていない場合、食事への執着が一時的に強まる事があるので、環境に慣れるまでは食事は少量ずつ、複数回与えることが望ましいでしょう。
多頭飼いをしている場合や小さな子供がいるなど、犬が落ち着いて食事ができない場合、ドッグフードを与えるときはケージに入れる(多頭飼いの場合は個別に)などして、ゆっくり落ち着いて食べることができる状況を作ってあげましょう。
多頭飼いの場合、大皿でドッグフードを食べさせたほうがよい? 記事はこちら
また、喉を詰まらせやすい愛犬にドッグフードを与えるときに、お水をさっとかけてから与えることもおすすめです。ふやかすのではなく、お水をフードひたひたぐらいに入れ、時間を置かずに、すぐに与えることで喉通りがよくなります。
ドッグフードの粒サイズに関しては、色々な意見があり、販売元メーカーの主張も様々です。ここ最近の傾向では、歯垢、歯石の付着予防のため、歯磨き効果の為に、あえて大粒のドッグフードを与え、噛み砕きながら食べることが理想的とする製品が増えています。
今まで、早食い、飲む込み食いをしていた犬に大粒のドッグフードを与えると、今までとは違い、噛み砕いて食べるようになったとの話を聞くこともあります。
ただ、基本的に犬は、本来人間のように食べ物を噛み砕いてから、飲み込むという習性を持ってはいません。飼い主の思うように、必ずしも噛み砕いて食べてくれるとは限らず、次第に愛犬が無理矢理にでも飲み込み、食べようとする可能性があることは承知しておきましょう。
中には、硬い物を食べることで歯や顎が丈夫になる、しっかりと噛むようにと、大粒のドッグフードを選ぶという飼い主さんもいます。でも、野生の環境で生きている狼は、生涯を通じて柔らかい生肉を食べていますが、決して虫歯になることも無ければ、顎が弱くなることもありません。
愛犬の食欲が旺盛で、飲み込むようにドッグフードを食べてしまう場合は、あえて小粒のドッグフードを選んでもよいでしょう。小粒のドッグフードであれば、万が一飲み込んでも、喉に詰まるリスクを低く抑えることができます。
また、通常のフードボウルを使って、ドッグフードを与えるのではなく、食事の都度、知育玩具にドッグフードを詰めて与える、早食い防止用に突起が付いているフードボウルを使う、ばらまいて一粒ずつ食べさせるなどの方法もあります。
残念ながら、早食いや飲み込み食いは、しつけでは改善することができません。愛犬の生まれつきの個性と考え、飼い主さんができる対策をしてあげましょう。
大切なことは、人間の想いよりも、犬本来の食性を尊重してあげることと、良質な食性活を送ることができるよう、無添加のドッグフードなど、安心できるものを継続して与えることです。
また高齢になり、早食いや飲み込み食いの習慣が残っていて、食事の都度、喉に詰まらせてしまう場合は、ドッグフードを事前にふやかした状態で与えるという方法がおすすめです。