PERORIが考えるドッグフードとドッグライフ
ドッグフードの品質、安全性を考えるうえで避けて通れないテーマの一つが、「ドッグフードに使われるトウモロコシについて」です。現在のドッグフード市場では、少しでも生産コストを抑えるため、原料として安く手に入るトウモロコシを使用したものが多く流通しています。特に、低価格帯の商品では、ほぼ例外なく何らかの形でトウモロコシを原料とした成分が含まれているとっても過言ではありません。
そもそも、トウモロコシは犬の体にどのような影響を与えるのでしょうか。それを考える上で、まずはトウモロコシの栄養素について簡単に触れておくことにします。
犬も人間と同様に「炭水化物、たんぱく質、脂質」などの3大栄養素を必要としますが、その中で最も多く取らなければならないのがタンパク質です。その中でも、特に動物性のタンパク質をより多く必要とするといわれています。
それほど多くはありませんが、トウモロコシにもタンパク質は含まれています。しかし、犬の健康維持のために必要なアミノ酸を多く含んでいるのは動物性のタンパク質であり、トウモロコシに含まれている植物性のタンパク質ではその代わりをつとめることは難しいのです。また、犬は祖先とされるオオカミから肉食の食性を受け継いでいるとされています。そのため、植物性のタンパク質を消化する能力はそれほど発達しておらず、どちらかというと苦手なようです。
トウモロコシに最も多く含まれる栄養素は炭水化物です。このことから、トウモロコシを使ったドッグフードの問題点がひとつ浮かび上がってきます。それは、ズバリ「必要な栄養素のミスマッチ」です。
犬が最も必要とする栄養素はタンパク質ですが、安く仕上げるためにトウモロコシを主な原料として作られたドッグフードの主な栄養素は、当然、炭水化物ということになります。
したがって、トウモロコシを主な原料としたドッグフードでは、犬に必要な栄養を十分にまかなえない可能性が高いのです。もちろん、トウモロコシそのものが食材として有害というわけではありません。ただ、犬の食事に必要な栄養素という観点からは、トウモロコシを大量に使ったドッグフードはあまり好ましくないといわざるを得ないのです。
私たちは、犬の食生活を考える際、どうしても人間の食事を基準に考えがちです。例えば、愛犬が太り気味の場合、お肉を控えめにして、ヘルシーな穀物中心の食事に変えてみようなどと考えてしまいます。
しかし、人間にとってヘルシーな食事が犬の健康にとっても同じように良いものだとは限りません。炭水化物は、体内で素早くエネルギー源に変換される反面、普段あまり運動しない犬の場合には、消費されなかった分のエネルギーはすぐに脂肪として体内に蓄えられます。
もともと、犬の食事は「高タンパク・低炭水化物」が基本とされ、炭水化物をあまり必要としません。反対に、炭水化物のとりすぎは肥満につながりやすいというリスクがあります。さらに、低血糖症や糖尿病、あるいは消化管の機能障害などの症状を引き起こす危険性も指摘されています。
あくまでこれはセルフチェックのひとつですが、現在与えているドッグフードが犬の体質に合っているかどうかを確認する方法として、毎日の糞の状態をチェックするというものがあります。例えば、トウモロコシを原料として使用したドッグフードを与え始めた頃から急に糞の量が増えたという場合、もしかしたら、そのドッグフードがうまく消化吸収されていないのかもしれません。
一方で、トウモロコシを使ったドッグフードに変えても、特に便の硬さや色、量などに大きな変化がなければ、そのドッグフードをそのまま与え続けてもよいという一つの目安になります。便に異常がないということは、そのドッグフードをしっかりと消化できているという証でもあるからです。
では、トウモロコシ(およびそれに含まれる炭水化物)は犬にとって全く無用なのでしょうか。実は、必ずしもそうとは言い切れません。
「高タンパク質、低炭水化物」を食事の基本とするとはいえ、犬にとっても、炭水化物がまったく必要ないというわけではありません。それどころか、犬にとっても炭水化物は健康維持のために欠かせない役割を果たす成分なのです。
炭水化物に含まれる成分の一つであるデンプンは、唾液に含まれるα-アミラーゼと呼ばれる消化酵素によってブドウ糖に分解され、体内でエネルギー源となります。
犬の唾液には、このαーアミラーセが含まれていないのですが、2013年にNatureで発表されたオオカミと犬のゲノム(DNA)の研究論文(The genomic signature of dog domestication reveals adaptation to a starch-rich diet)では、犬がデンプンを分解する能力を持つことが科学的に証明されています。
また、通称「カリカリ」と呼ばれるドライフードは、炭水化物によって整形されています。栄養面以外でも、炭水化物はドッグフードにおいて重要な役割を担っているのです。
そのほかにも、トウモロコシにはビタミンB1、B2 などの栄養素が含まれています。トウモロコシに含まれる水溶性のビタミンであるビタミンB1は、糖質をエネルギーに変える役割を果たします。つまり、炭水化物に含まれるデンプンの消化をサポートする働きをするということです。加えてビタミンB1は、皮膚や粘膜の健康維持にも欠かせない役割を果たします。
ビタミンB2もビタミンB1同様、水溶性のビタミンで、皮膚や粘膜の健康をサポートします。そして、糖質、脂質、たんぱく質をエネルギーに変える役割を果たします。
ほかにも、トウモロコシには、犬の体内では合成できない必須脂肪酸のひとつであるリノール酸が豊富に含まれています。こうしてみると、トウモロコシには犬の体にとってプラスに働く面も多く見られ、トウモロコシにアレルギーを持っているわんちゃん以外は、必ずしも避けなければならない食材ではありません。
安価なドッグフードでは、コスト削減を目的としてトウモロコシが使われていることが多く、残念ながらそれらは決して質のよいものとはいえないのが実情です。
しかし、とれたてのトウモロコシは甘くて瑞々しく、身体のエネルギーになる炭水化物をはじめ、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンEなどのビタミン群、リノール酸、食物繊維、そしてカルシウム、マグネシウムなどの各種ミネラルをバランスよく含んだ栄養豊富な食材です。
もし、愛犬にトウモロコシを食べさせるのであれば、スーパーなどで市販されている鮮度の良いものを選ぶとよいでしょう。ただし、食べ過ぎると消化しにくいことがありますので与えすぎには気をつけてください。