PERORIが考えるドッグフードとドッグライフ

犬の十戒(じっかい)を知っていますか?

 

皆さんは、「犬の十戒(じっかい)」というものをご存知でしょうか。

 

犬の十戒は、作者不明のまま、世界的に広く知られてるようになった短編詩のタイトルです。その原文は英語で書かれており、原題は「 The Ten Commandments of Dog Ownership」といいます。

 

十戒の「戒」の字は「戒め(いましめ)」とも読むことから、言葉だけを見るとなんだか物々しい印象を受けるかもしれません。しかし十戒は「10の約束」を意味し、懲罰やお仕置きについて書かれたものではありませんのでご安心ください。

 

 

犬の十戒(じっかい)

 

1)My life is likely to last ten to fifteen years. Any separation from you will be painful for me. Remember that before you get along with me.

私の一生はだいたい10年から15年。あなたと離れるのが一番つらいことです。どうか、私と暮らす前にそのことを覚えておいてください。

 

2)Give me time to understand what you want of me.

あなたが私に何を求めているのか、私がそれを理解するまで待ってください。

 

3)Place your trust in me- it’s crucial to my Well-being.

私を信頼してください。それが私の幸せなのだから。

 

4)Don’t be angry at me for long and don’t lock me up as punishment. You have your work, your entertainment and your friends. I have only you.

私を長い間叱ったり、罰として閉じ込めたりしないでください。あなたには他にやる事があって、楽しみがあって、友達もいるかもしれない。でも、私にはあなたしかいないのです。

 

5)Talk to me. Even if I don’t understand your words, I understand your voice when it’s speaking to me.

たくさん話しかけてください。言葉は分からなくても、あなたの声は届いています。

 

6)Be aware that however you treat me, I’ll never forget it.

あなたがどのように私に接したか、私はそれを全て覚えていることを知っていてください。

 

7)Remember before you hit me that l have teeth that could easily crush the bones of your hand but that I choose not to bite you.

私を殴ったり、いじめたりする前に覚えておいてください。私は鋭い歯であなたを傷つけることができるにもかかわらず、あなたを傷つけないと決めていることを。

 

8)Before you scold me for being uncooperative, obstinate, or lazy, ask yourself if something might be bothering me. Perhaps I’m not getting the right food or I’ve been out in the sun too long or my heart is getting old and weak.

私が言うことを聞かないだとか、頑固だとか、怠けているからと叱る前に、私が何かで苦しんでいないか気づいて下さい。もしかしたら、食事に問題があるかもしれないし、長い間日に照らされているかもしれない。それとも、もう体が老いて、弱ってきているのかもしれません。

 

9)Take care of me when I get old ; you, too, will grow old.

私が年を取っても、私の世話をしてください。あなたもまた同じように年を取るのですから。

 

10)Go with me on difficult journeys. Never say, “I can’t bear to watch it .” or ” Let it happen in my absence.” Everything is easier for me if you are there. Remember I love you.

最期のその時まで一緒に側にいて欲しいのです。「もう見てはいられない」「ここにいられない」など言わないでください。あなたが側にいてくれることで私は幸せな気持ちで、安らかに逝けるのですから。忘れないでください、私は生涯あなたを一番愛しているのです。どこに居ても愛しています。

 

 

犬の本

誰が書いたものなの?

世界中で多くの人に読み継がれ、とても有名な犬の十戒ですが、実はいったい誰が書いたものか、はっきりとしたことは分かっていません。ただ、原文が英語で書かれたものであることから、おそらく英語圏に住む人物が書いたものではないかと推察されます。

 

どんなことが書かれているの?

十戒には、犬と人が出会ってから別れの時を迎えるまで、忘れないでいてほしいことが書かれています。別の言い方をすれば、犬と飼い主とが、ともに幸福な時間を過ごすために覚えておいてほしいことについて、「犬から人への10のお願い」という形で語りかけたものだということもできます。ちなみに、日本でもこの「犬の十戒」をモチーフに邦題「犬と私の10の約束」として本が出版され、のちに映画化もされています。

 

犬の十戒は、一見すると、とてもシンプルな10の文章の集まりに見えます。しかし、シンプルである中に、人が犬と暮らす上で大切なことがすべて表現されているといっても決して過言ではありません。それほど言葉の一つ一つが洗練され、犬への深い愛情がひしひしと伝わってきます。愛犬と生活をともにしている方は、きっと、ハッと胸を突かれるような、そんな一文に出会ったのではないでしょうか。

 

原典は鳥の十戒?

作者が誰なのか分からないまま世界的に広く知られるようになった犬の十戒ですが、そのルーツを巡ってはいくつかの説が唱えられています。その一つが、鳥の十戒が原文なのではないかという説です。

 

「鳥の十戒(10 Commandments of Parrot Ownership)」は、犬の十戒と同様、鳥が人間と暮らす上で気を付けてほしいことについて鳥の目線に立って書かれたもので、Jane Hallanderという人物によって書かれたものだといわれています。そこで、あらためて両者を読み比べてみると、確かに、どちらも同じ10編の短い詩という形式をとっており、詩の内容自体もとてもよく似ています。

 

しかし、それだけでこの説が正しいと断言することはできません。もしかしたら、作者は既に存在した犬の十戒からインスピレーションを得てこの作品を作ったのかもしれませんし、また、両者が作成された前後関係もはっきりとしたことは分かっていません。ただし、内容的に重複した部分が多いことから、何らかの関係があることは、おそらく間違いなさそうです。

 

ノルウェーの犬のブリーダーが作成したものが元になっているという説

犬の十戒の誕生を巡っては、もうひとつ有力視されている説があります。それは、ノルウェー人のブリーダーMirt Teigenさんが、これから犬を飼う人に渡している「犬からご主人への11のお願い」がもとになっているというものです。こちらも原典があり、犬の十戒と読み比べてみると、やはりとてもよく似ています。唯一の違いは、約束の数が10か11かということですが、実際には、10個目と11個目のお願いは、十戒の方では10番目の約束という形で一つにまとめられていますので、内容的は、ほとんど同じだということもできます。

 

犬の十戒の原典として有力視されている「犬からご主人への11のお願い」には、読んでみるといくつかの興味深い点があります。まず、気になるのが、なぜ作者は、きりのいい10ではなく11の約束という形を選んだのかということです。しかし、それは、本文を読み進み、11個目の約束にたどりつく頃には、おそらく「あ、そういうことだったのか」と納得できることでしょう。

 

なぜ10ではなく11だったのか? 11番目のお願いへと続く10個のお願いは(もちろん、どれもとても大切なことですが)、どれも、犬から人間にむけて「してほしいこと」について書かれています。それは、たとえば「できるだけ一緒にいてほしい」や「話しかけてほしい」など、とても具体的な行為として示されています。

 

ただ、11個目だけは、ちょっと違います。もしかしたら、作者は10個の大切なお願いを書き終えた段階で、ふと最後に伝えておかなければいけないメッセージについてひらめきを得たのかもしれません。それを、10番目に付け加えるのではなく、あえて11番目としたことで、最後の一行は、特別なメッセージとしてより一層引き立って見えます。

 

まだ幼い子犬と出会い、これから多くの時を過ごしていくであろう飼い主一人一人むけて、この言葉を送ったブリーダーの胸の内を思うと、感慨もひとしおです。

 

 

ダックスフントの老犬

犬の十戒の作者が伝えたかったこと

もしかしたら、忙しくてなおざりになってしまうこともあるかもしれないけれど、実は犬と暮らす上でとても大切なこと。それを忘れないでいてほしい、そして、もし、忘れたら、いつでも思い出してほしい。きっと、十戒の作者は、この短い詩の中で、そんなメッセージを伝えたかったのではないでしょうか。ただお水を与え、ドッグフードを与え、トイレシーツの交換をするだけのお世話だけをすればいいということではなく、犬にも心があり、会話をし、家族として接して欲しいとの願いが込められているように思います。そして、何よりも言いたかったのは、「犬にとっては家族と過ごす時間がすべて」なのだということだったのではないでしょうか。

 

もしかしたら未来のあなたにむけて書かれたものかもしれない

犬の十戒は、犬から飼い主さんへのお願いという形で書かれています。作中の語り手は犬ですから、まずは当然、「犬にとって」幸福な一生をおくる上で大切なことについて書かれているものだとみ見るのが、おそらく自然なことなのでしょう。ただ、この詩にこめられたメッセージは、実はそれだけではないのではないのかもしれません。

 

この詩を最後まで読んでみると分かるのですが、10個目のお願いでは、「死期が近づいた犬との最期のとき」について書かれています。そして、ここまでにたどり着く頃には、読者は、あたかも、ある犬(それは今一緒に暮らしている愛犬なのかもしません)との出会いから別れまでを追体験したかのように感じていることでしょう。

 

もし、この十戒のうち、ひとつでも疎かにしている項目が目に留まったならば、あるいは愛犬との実際の別れの時を想像し、日々の接し方を反省し、襟をただすきっかけになるかもしれません。つまり、この詩は、「未来のあなた」が、愛犬とともに過ごした(あるいは過ごすことのできなかった)時間をいつか振り返って後悔しないための処方箋であるともいえるのです。

 

犬はもちろんのこと、犬と一緒に過ごす家族のしあわせまでも考えて作られたもの…

犬の十戒は、作者不明のまま有名になったというちょっと珍しい経緯を辿って今日に至ります。しかし、一読すれば、そんな些細なことはすぐに忘れて、詩の内容に引き込まれてゆくことでしょう。それだけ、この詩にこめられたメッセージは力強く普遍性に満ちています。

 

犬と一緒に過ごす家族のしあわせまでも考えて作られたもの…そんな風にとらえ直してみると、この詩はより一層慈愛に満ちたものに感じられ、一文一文にこめられたメッセージも、より深く胸にしみ込んでくるかのようです。そして、それはきっと、読んだ人の数だけ、この詩から受け取るメッセージがあるということでもあり、この詩が世界中で広く愛され、読み継がれている理由なのかもしれません。

 

 

 

 

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