PERORIが考えるドッグフードとドッグライフ
犬はなぜ顔をペロペロと舐めるの?
犬を飼っている方や、かつて飼われたことのある方なら、愛犬に顔を舐められたという経験をお持ちの方も多いことでしょう。それほど、犬にとって顔を舐めることはごく自然な行為です。でも、ふと「この子はどうして顔をなめるんだろう?」と疑問に感じたことはないでしょうか。実は、犬はただ何となく顔をなめているわけではありません。そこには、ちゃんと意味があるのです。
顔をなめるのは目上の相手に対するあいさつ
犬の祖先と言われるオオカミは、かつて群れで共同生活を送っていました。群れには一番偉いボスが存在し、オオカミたちは、無用な争いを避けるために、自分より力の強いものに対し、顔をなめることで敵意がないことを表していたと言われています。そうやって群れの平和と秩序を保っていたのです。
そして、その習性は、犬にも受け継がれており、犬は家族の中で自分より立場が上だと認めた相手に対して、顔をなめることで親愛の情と敬意を表現しているのです。
お腹がすいたサイン
犬は、オオカミを祖先に持つとされています。もともと、野生のオオカミの子供は、母親のオオカミがエサを狩りから持ち帰ると、その口の周りをなめることで「早くちょうだい!」とおねだりするのだそうです。そして、母親は子供から顔をなめられると、持ち帰った餌を口から出して子供に与えます。
犬は、このオオカミの子供がもつ習性も、目上の相手へのあいさつと共に受け継いています。空腹時には、飼い主さんの口をなめることで「お腹がすいた!」というメッセージを伝えているのです。
時に不安やストレスが原因の場合も
犬の性格は、犬種や個々のワンちゃんの個性によってさまざまで、中には気が小さく繊細な性格をしている子もいます。そして、そのような犬の場合、顔をなめることが一種の強迫観念のようになってしまっている場合があります。強迫観念とは、「本人の意思と無関係に頭に浮かぶ、不快感や不安感を生じさせる観念を指す」と定義されますが、その強迫観念を解消するために、繰り返し行う行為のことを「強迫行為」と呼びます。
日常的に強いストレスや何らかの不安があると、それを強迫行為によって解消しようとします。特に、犬の場合は、顔をなめることが一種の強迫行為として現れる可能性も考えられます。つまり、親しい相手の顔をなめることで、不安な気持ちを解消し心のバランスを保とうとしているのです。
もし、愛犬が何かにとりつかれたかのように、執拗に家族の顔をなめるようなら、それは日頃、何か強い不安やストレスをかかえているサインかもしれません。普段何気ないことでも、繊細な性格の犬の場合は、ちょっと冷たくされただけで「もしかして、嫌われちゃったのかな」などと不安に感じることもあります。気になる場合には、日頃の生活習慣の中で何かストレスの原因となるようなことが無いか一度振り返ってみることをおすすめします。
加えて、スキンシップの時間を増やしたり、「好きだよ」や「ありがとう」など言葉で好意を伝えることなども意識してみてください(犬の十戒にもある通り、犬は家族のメッセージをちゃんと理解しています)。これら愛犬の不安やストレスを取り除くためのちょっとした工夫によって、徐々に強迫行為を和らげる効果が期待できます。ただ、それでもどうしても過剰な顔なめが収まらないという場合には、一度、動物病院で獣医さんなどの専門家に相談してみてください。
顔なめをやめさせたいとき
犬が飼い主や親しい相手の顔をなめるのは、親愛の情や敬意のサインです。しかし、フレンドリーな犬の場合、出会って間もない人の顔までなめてしまうこともあります。犬に悪気はなくても、人によっては顔をなめられることがあまり好きではないということもあるでしょう。また、女性の場合、お化粧をした後など、なめられたくないタイミングもあります。しかし、大きな声を出して叱ったり、「やめて~」などと声に出して拒否をするのは実は逆効果。犬は、飼い主さんが喜んでくれていると勘違いし、さらになめる行為がエスカレートしていくことにつながります。
口や顔をなめるのをやめさせたいときは、ソッポを向いて無視するのが効果的です。具体的には、犬が顔や口をなめてきた瞬間に、プイッとそっぽを向いてしまいます。最初は困惑するでしょうが、犬もだんだんと「顔をなめると、遊んでもらえなくなる、甘えられなくなる」ということを理解しはじめ、積極的になめようとはしなくなります。
ポイントは、顔をなめた瞬間すぐにそっぽを向くことです。時間があくと、犬には「顔をなめる→遊んでもらえなる」というつながりが理解できません。そして「なぜか急に遊んでもらえなくなっちゃった」と何の教訓も得られずにガッカリするだけで終わってしまいます。
愛犬に対しそっぽを向くのは、決して罰したり、苦痛を与えるためのものではありません。あくまで、なめてほしくないということを教えるためのトレーニングですので、感情的にならず、冷静に、愛犬が分かるまで根気強く行っていくことが大切です。そして、トレーニングの成果が出て、そっぽを向かなくても顔なめを思いとどまったときには、思い切りほめてあげてください。
先ほど、性格の優しい犬の中には、「舐めないと飼い主さんに嫌われてしまう」と半ば強迫観念的に顔をなめようとする子もいるのだとお伝えしました。ほめてあげることで「大丈夫。顔をなめなくても変わらず君のこのが好きだよ。」というメッセージを伝えてあげれば、犬も必要以上になめなくてもよいのだと少しずつ理解していきます。
顔をなめられると病気になる?
犬に顔をなめられると病気になるという話を耳にすることがあります。そうであれば、皆一様に顔や口をなめさせないようしつけをするようにも思えるのですが、一方では、特に気にせず、顔なめを許している飼い主さんも多く見受けられます。では、顔なめと病気の関係について実際のところはどうなのでしょうか。
まず、犬から人に感染する病気のことを人獣共通感染症(ズーノーシス)と呼びます。その中で、顔をなめることによって感染する可能性があると言われているのが「パスツレラ症」と呼ばれる感染症です。なぜなら、犬はかなりの割合で口の中にパスツレラ症の原因となるパスツレラ菌を保有しているためです。パスツレラ菌は、通常は人に感染しても特に症状が出ません。ただし、乳幼児や、免疫力の弱った人の場合には、まれに気管支炎などを引き起こすこともあります。
ちなみに、犬から人に感染する病気として有名なものに「狂犬病」がありますが、これは現在、予防接種が義務付けられており、感染の心配はほぼないと言われています。
犬の顔なめと病気の関係に関して、結論としては、「それほど神経質になる必要はないが、乳幼児や免疫力が低下している方は、犬との過度な接触は避けた方がよい」ということが言えそうです。実際、毎日のように顔を舐められているけれど病気になんてなったことが無いという方がほとんどでしょう。
それでも一番伝えたいことは・・・
ここまで、犬が顔をなめる理由と原因についていくつか見てきました。なめるタイミングや頻度によっていろいろな意味があるものの、犬が一番伝えたいことは「あなたのことが好き」というメッセージです。顔をなめることで、あなたや家族に対し、精いっぱいの愛情を表現しようとしているのです。
大好きな愛犬から顔をなめられるということは、それだけ信頼されているという証でもあり、嬉しいことです。しかし、初対面の人や犬が苦手な人にもいきなり飛びついて顔をなめようとしたり、また、場合によっては病気やアレルギーなどのリスクもあることから「必要以上になめないでね」と教えることも、また大切です。
「今はなめちゃだめ!」と教えるときには、あえて心を鬼にする瞬間も必要ですが、うまくできた時には思い切りほめてあげてください。そうすることで、犬も「なめる以外に愛情表現の方法がある」ということを学んでいくことでしょう。
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